エルンスト・クレッチマー

エルンスト・クレッチマーの生涯と業績

エルンスト・クレッチマー（1888年 - 1964年）は、ドイツの精神科医であり、人間の気質を研究し、体型と関連付けて類型化したことで知られています。ヴュステンロート出身で、マールブルク大学やテュービンゲン大学で精神科の診療部長を務めました。

彼の著作は多岐にわたり、『新敏感関係妄想』『ヒステリーの心理学』『体格と性格』『医学的心理学』『精神医学論集』『天才の心理学』などがあります。

『医学的心理学』では、脳科学と精神医学の密接な関係を説き、現代の精神医学の教科書にも匹敵する内容を含んでいます。また、『精神医学論集』は、彼の死後に息子のヴォルフガング・クレッチマーによって編纂され、彼の思想や当時のドイツの風潮が記録されています。

『天才の心理学』は、彼の集大成とも言える著作で、様々な天才の事例を挙げ、狂気と天才の関係を探求しています。クレッチマーは、天才を「人類中の稀有にして、極端なる変種」と結論付けましたが、当事者の意見との間に主観的な世界と科学的な世界の乖離があることも指摘しています。

クレッチマーの3つの気質類型

クレッチマーは、パーソナリティの中心は気質であると考え、体型と気質を結びつけた3つの類型を提唱しました。

1. 細長型（分裂気質）: 静かで控えめで真面目な性格。敏感性と鈍感性を併せ持つ。
2. 肥満型（躁うつ気質/循環気質）: 社交的で親切で温厚な性格。
3. 闘士型（筋骨型/粘着気質）: きちょうめんで熱中しやすく頑固で興奮しやすい性格。

クレッチマーの気質類型と関連する性格

クレッチマーの類型論は、パーソナリティを理解する上で重要な概念を提供しています。彼の理論は、体型だけでなく、性格や行動パターンを理解する手がかりとなります。

神経質タイプ（N型）: 感受性が鋭く、内省過剰で傷つきやすい。消極的な面があり、力を発揮できないことがある。体型は線の細い、やせた体格。
粘着質タイプ（E型）: 几帳面で礼儀正しく義理堅い。忍耐強いがストレスを溜め込みやすく、頑固な面も持つ。体型は筋肉質でがっちりした体格。
顕示質タイプ（H型）: わがままで勝気、嫉妬深く見栄っ張り。社交的で目立ちたがり屋。話題豊富で知識があるが、打算的な面も持つ。
偏執質タイプ（P型）: 自信家で自己中心的。有能な場合はリーダーシップを発揮するが、傲慢で独善的な面もある。対人関係では攻撃的。
分裂質タイプ（S型）: 物静かで非社交的。デリケートで独自の価値観を持つ。芸術的な才能を発揮することが多い。対人関係では好き嫌いが激しい。体型はやせ形。
循環質タイプ（Z型）: 社交的で善良。気分が高揚しているときは活発だが、周期的に沈み込む時期がある。理解が早く、社会で成功しやすい。体型は太った体格。

関連分野

心理学、教育心理学、学校[[心理学]]、臨床心理学、精神疾患、感情、臨床心理士

参考文献

『天才の心理学』エルンスト・クレッチュマー、内村祐之訳、岩波文庫、1982。
『精神医学事典』、加藤正明、保崎秀夫ほか編集、1975、弘文堂

外部リンク

Images in Psychiatry: Ernst Kretschmer (1888–1964)

クレッチマーの研究は、人間の複雑な性格を理解するための重要な基盤を提供しています。彼の類型論は、現代の心理学や精神医学においても参考とされており、その影響は大きいと言えるでしょう。

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