エルンスト・フォン・アイゼナッハ

エルンスト・フォン・アイゼナッハ：寡黙なる用兵家

エルンスト・フォン・アイゼナッハは、田中芳樹の壮大なSF叙事詩『銀河英雄伝説』に登場する、銀河帝国の主要な提督の一人です。作中では主に「アイゼナッハ」と呼ばれています。

概要

アイゼナッハは、ラインハルト・フォン・ローエングラムの下で数々の戦功を挙げ、後に「獅子の泉の七元帥」の一人に数えられるほどの地位に上り詰めます。旗艦は「ヴィーザル」。彼の最も特徴的な点は、極端な寡黙さであり、それゆえに「沈黙提督」という異名を持ちます。しかし、その寡黙さとは裏腹に、ケレン味のない手堅い用兵術に長け、難易度の高い任務も淡々と、そして確実に遂行するため、多くの将兵から厚い信頼を寄せられています。その異様なまでの無口さは、作中で半ばコメディ的なネタとして扱われることも少なくありません。

本編での初登場は、第8次イゼルローン攻防戦におけるワープ実験に立ち会ったラインハルトの幕僚として（第3巻）。OVA版では、リップシュタット戦役の直後にレンネンカンプと共に元帥府に登用されるシーンが追加されており、こちらが最初の登場となっています。時系列上の最初の登場は、アニメ外伝『奪還者』におけるヘルクスハイマー伯爵の亡命阻止任務です。物語への本格的な登場は比較的遅く、その役割も基本的に地味ではありますが、前述の通り、異常なまでの無口さを特徴としたエピソードがしばしば挿入され、その存在感を示しています。

略歴

時系列上、最も初期の登場はOVA外伝「奪還者」第4話で描かれた帝国暦484年1月の出来事です。本人は映像には登場しませんが、複数の同盟軍艦艇から追撃を受けているラインハルトの旗艦に対し、足の遅い補給艦で全速航行しながら補給物資を放出し、艦の外壁で乗組員がそれを受け取るという、地味ながらも非常に効果的な作戦を実行し、ラインハルトにその能力を認められます。この時、ラインハルトの旗艦で副長を務めていたワーレン少佐は、補給艦の艦長がアイゼナッハ少佐であり、「沈黙艦長」の異名を持っていることをラインハルトに説明しています。リップシュタット戦役後、レンネンカンプらと同時期に元帥府に登用され、提督の列に加わります。以降は、目立たないながらも重要な役割を数多くこなし、物語の最後まで生き残りました。

能力

ラインハルトがアイゼナッハを元帥府に登用することを決めた際、ラインハルトの人事にしばしば異を唱えるオーベルシュタインが、この人事には全面的に賛成したという逸話が残っています。これは、アイゼナッハの能力の高さを示すエピソードと言えるでしょう。

彼は堅実な艦隊指揮を信条とし、作戦行動においては、見栄えよりも確実な戦果を優先して行動します。リップシュタット戦役までは、主に敵の後方攪乱、敵の増援部隊阻止、陽動作戦、上陸支援といった、地味ながらも重要な任務を黙々とこなし、一度も失敗することがありませんでした。ラグナロック作戦では、ロイエンタール率いるイゼルローン要塞攻撃部隊の後詰めを担当。第二次ラグナロック作戦では、侵攻部隊の中盤を担当しました。作戦中のマル・アデッタ会戦では、右翼から後方に回り込んで同盟軍をかく乱する活躍を見せています。シヴァ星域の戦いでは、ビッテンフェルト艦隊のサポートとして、遠距離攻撃でイゼルローン軍の戦力を削ることに専念しました。ある程度の裁量を与えられた際には、常に広角的な視野を持って行動を起こし、後退しつつ敵の攻勢を誘い、逆撃を加える戦法を好みます。

このように、主にサポートに特化している反面、艦隊同士の正面対決はやや不得手な様子で、回廊の戦いでは、ヤン艦隊本隊とアッテンボロー分艦隊を側面攻撃から分断しようと試みましたが、逆に挟み撃ちに遭い、かなりの損害を被っています。さらに、マリノ分艦隊による突撃で旗艦にまで迫られかけ、護衛を失いつつ辛うじて撤退を余儀なくされています。

指揮に際しても、口頭ではなく手振りや指を鳴らして指示を出すことが多く、副官であるグリースが、その意図を読み取って具体的な号令を下します。

人柄

異名の通り寡黙な人柄であり、そのため周囲からは気難しい性格だと思われています。しかし、第2次ラグナロック作戦実施中のエピソードとして、提督が指を1回鳴らしたらコーヒーを、2回鳴らしたらウイスキーを4分以内に出すように指示された従卒の幼年学校生が、極度の緊張から取り違えて、ウイスキーを1杯出すべきところをコーヒーを2杯持ってきた際、彼は恐る恐る差し出されたコーヒーを黙って2杯とも飲み、しばらくの間禁酒を余儀なくされたという逸話があります。このエピソードから、従卒のことを思いやる温かみのある性格か、あるいは従卒にすら叱責できないほど喋るのが苦手なのか、少なくとも気難しさとは対極的な性格であったことが伺えます。この他にも、彼が喋ったケースの逸話や、口論して激昂するビッテンフェルトとワーレンに鉱水を浴びせるなど、謹厳なキャラクターに反するエピソードが多々存在します。

家族

ローエングラム王朝成立後の帝国軍主要提督の中では唯一の妻子持ちです。彼がどのようにして妻を口説いたのかは、同僚の間でも大きな謎とされています。これに関して、田中芳樹は「奥さんの方からアイゼナッハを口説いたんです」「アイゼナッハに婚姻届けにサインさせた」と明かしています。また、ミッターマイヤーは自身が養子を持った際、アイゼナッハ家の賑やかな様子を想像できないと呟いています。

声優

アニメにおいて声を担当した声優は津嘉山正種。OVA版本伝でのセリフも第4期終盤、106話の「チェックメイト」のただ一言です。

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