エルヴィス (エルヴィス・プレスリーのアルバム)

『エルヴィス』（Elvis）は、エルヴィス・プレスリーが1956年10月に発表したセカンドアルバムです。このアルバムは、彼の音楽キャリアにおける重要な転換点を示す作品として、今日でも高く評価されています。

アルバムの収録曲は、前作『エルヴィス・プレスリー登場!』のセッションからの「恋がかなった」を除く11曲が、1956年9月1日から3日にかけて、ハリウッドのラジオ・レコーダーズで録音されました。このセッションでは、「ハウンド・ドッグ」の大ヒットを受けて、エルヴィスへの提供曲を一手に引き受けていたヒル＆レインジ音楽出版が、ジェリー・リーバーとマイク・ストーラーに楽曲の提供を依頼しました。

しかし、リーバーとストーラーは、この申し出を当初は真剣に受け止めませんでした。彼らは自分たちが作った曲の中で最低の出来だと評していた「ラヴ・ミー」を提供したのです。ところが、エルヴィスは見事にこの曲をアレンジし、リーバーとストーラーもエルヴィスのバージョンを大変気に入り、評価を改めました。このエピソードは、エルヴィスの音楽的な才能と、楽曲を独自の解釈で昇華させる能力を示すものとして、よく知られています。

また、「ファースト・イン・ライン」のレコーディングでは、エルヴィスが納得するまで27ものテイクが重ねられました。これは、エルヴィスが自身の音楽に対して非常に高いレベルの要求をしていたことを物語っています。

さらに、「オールド・シェップ」は、エルヴィスが10歳の時にミシシッピーアラバマフェアで初めて大勢の人前で歌い、5等賞を獲得した曲です。この曲は、エルヴィスの音楽のルーツをたどる上で非常に重要な意味を持っています。

このアルバムでは、エルヴィス自身がピアノを弾きながら歌っていることも特筆すべき点です。エルヴィスが自分でピアノを弾きながらレコーディングしたのはこれが初めてとされています。ただし、サン・レコード時代に録音された「お前が欲しくて(Trying to Get To You)」にもピアノの音が聞き取れるため、どちらが最初のピアノ演奏なのかについては議論の余地が残されています。しかし、いずれにしても、エルヴィスの多才ぶりを示す貴重な記録であることに変わりはありません。

「こんな気持ちがわかるかい」は、サン・レコード時代にもレコーディングに挑戦しましたが、当時はドラマーのジミー・ロットがうまくグルーヴを出せず断念されました。しかし、今回D.J.フォンタナのドラムを得て、レコーディングに成功しました。

1999年には、このアルバムのアップグレード盤として、6曲がボーナストラックとして追加されました。この再発盤では、「ハウンド・ドッグ」と「冷たくしないで」が最初に収録され、その次にオリジナル収録曲、残りのボーナストラックという曲順でしたが、その後の再発盤では、ボーナストラックは全てオリジナル収録曲の後に収録されています。さらに、2011年には、『エルヴィス・プレスリー登場!』のレガシー・エディションのディスク2としてカップリングされました。


収録曲

A面

B面

ボーナストラック


参加ミュージシャン

[エルヴィス・プレスリー] – ヴォーカル、ギター、ピアノ
スコティ・ムーア(Scotty Moore) – ギター
ショーティ・ロング(Shorty Long) – ピアノ
ゴードン・ストーカー(Gordon Stoker) - ピアノ
ビル・ブラック(Bill Black) – ベース
D・J・フォンタナ(D.J. Fontana) – ドラムス
ザ・ジョーダネアーズ(The Jordanaires) - バッキングボーカル


このアルバムは、エルヴィス・プレスリーの音楽的な成長と、彼自身の多様な才能を示す重要な作品として、後世に語り継がれています。

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