エレナ・チャウシェスク

エレナ・チャウシェスク：ルーマニアの権力者

エレナ・チャウシェスク（1916年1月7日 - 1989年12月25日）は、ルーマニアの共産主義政治家であり、ニコラエ・チャウシェスクの妻として、ルーマニア社会主義共和国で絶大な権力を誇りました。彼女は閣僚評議会第一副議長、共産党中央委員会委員などを歴任し、「国民の母」と称され個人崇拝の対象となりました。

生い立ち

エレナは、ルーマニア王国の農家に生まれ、本名はレヌーツァ・ペトレスクでした。小学校を卒業できなかったものの、音楽、体操、裁縫に才能を発揮しました。ブクレシュティに移住後、薬の実験室や化学繊維工場で働きました。1937年に共産党に入党し、1939年にニコラエ・チャウシェスクと出会い、1947年に結婚しました。後に名前をエレナに改名しました。

権力掌握

初期には外務省での勤務経験もありましたが、その能力は低いと評価されました。しかし、夫ニコラエが共産党書記長に就任すると、エレナは政治の中枢に入り込み、次第に権力を掌握しました。中国訪問で江青に触発された彼女は、ルーマニアにおける自身の政治的地位を高めるべく活動し、党の要職を歴任しました。1970年代には党執行委員会委員、政治執行委員会常設局委員となり、閣僚評議会第一副議長にも就任し、夫に次ぐ権力者となりました。

個人崇拝

1980年代になると、エレナは「国民の母」と呼ばれ、個人崇拝の象徴となりました。彼女の虚栄心は夫以上であり、国営放送は彼女の容姿を気遣い、横顔を映さないよう厳命されていました。また、教会を解体するよう命じるなど、権力を濫用しました。

化学者としての評価

エレナは化学の学位を取得し、博士号も取得しましたが、その科学的業績については多くの疑問が呈されています。彼女の名前で発表された論文は、実際には他の科学者によって書かれたものであり、彼女は研究成果を横取りしたという主張があります。また、二酸化炭素の化学式を間違えて発音した逸話も残っています。王立化学研究所の会員資格は剥奪されましたが、欧州特許庁は彼女の名前で登録された特許を保管し続けています。

革命と処刑

1989年、ルーマニア革命が勃発し、エレナは夫とともに首都から逃亡を図りましたが、軍隊に拘束されました。救国戦線評議会による略式裁判で、国家に対する犯罪、自国民の大量虐殺などの罪で起訴され、夫婦ともに死刑を宣告されました。1989年12月25日、エレナは夫とともに銃殺刑に処せられました。処刑の様子はテレビ中継され、世界中に衝撃を与えました。彼女の処刑は、ルーマニアにおける最後の死刑執行となりました。

受勲と名誉学位

エレナは、ルーマニア社会主義共和国英雄勲章を始めとする数多くの勲章を受勲し、世界各国の大学から名誉博士号を授与されました。しかし、彼女の権威は政治的なものであり、学術的な評価は低いものでした。

まとめ

エレナ・チャウシェスクは、夫の権力を背景に政治の中枢で影響力を増大させましたが、その支配は国民の不満と抵抗を招き、悲劇的な最期を迎えました。彼女の生涯は、個人崇拝の危険性や権力濫用の恐ろしさを物語るものであり、現代においても重要な教訓を与えてくれます。

参考資料

書籍：参考文献に記載されている書籍を参照。
ウェブサイト：外部リンクに記載されているウェブサイトを参照。

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