エンクロージャー

エンクロージャーとは

エンクロージャーとは、「囲い込むもの」という意味で、機械類を格納する筐体のことを指します。IT業界では、特にブレードサーバを格納する筐体などを「エンクロージャー」と呼ぶことがあります。一方、オーディオ愛好家の間では、スピーカーユニットを収める箱、特に全帯域用や低音域用のものを指すことが多く、「スピーカーエンクロージャー」と呼ばれることもあります。

エンクロージャーの役割

スピーカーにおけるエンクロージャーの主な役割は、スピーカーユニットの前面から出る音と背面から出る音を分離することです。スピーカーユニットの振動板は、前後に逆位相の音を放射するため、そのままでは音が干渉し、特に低音域が打ち消しあってしまいます。そのため、スピーカーユニットをエンクロージャーに取り付けることで、低音域の再生を可能にします。

大きなスピーカーユニットでは、バッフル効果によってエンクロージャーなしでも低音域を再生できる場合がありますが、低音域が弱点となる場合が多いです。また、エンクロージャーは音を分離するだけでなく、低音域を増強するために活用されることもあります。

エンクロージャーの種類

エンクロージャーには様々な種類があり、それぞれに特徴があります。

平面バッフル、後面開放型（ダイポール型）

平面バッフルは、スピーカーユニットを平らな板に取り付け、前面と背面の音を分離する形式です。理想的には無限大バッフルですが、現実には有限の大きさになります。そのため、低音域を再生するには大きな板が必要となります。実用面では、平面バッフルの四隅を折り曲げ、後面を開放した箱状にするのが一般的で、後面開放型と呼ばれます。奥行きが小さい場合は、有限な平面バッフルとほぼ同じ効果が得られます。

密閉型（シールド型、アコースティック・エアー・サスペンション型）

密閉型は、スピーカーユニットを密閉された箱に取り付け、背面の音を箱の中に閉じ込める形式です。箱の中には吸音材が詰められます。箱の容積が大きいほど理想的な平面バッフルに近づき、癖の少ない音質が得られます。しかし、容積が小さくなると、箱の中の空気がバネのように働き、低音の限界が高くなります。過度に容積が小さいと、共振周波数付近の音が響くようになります。箱内の空気のバネを積極的に利用したものを、アコースティック・エアー・サスペンション型と呼ぶことがあります。密閉型は放熱には不利で、市販のスピーカーによく用いられる形式です。

バスレフ型（バスレフレックス型、位相反転型、ベンテッド型、ポーテッド型）

バスレフ型は、箱にダクト付きの孔（ポート）を設け、ヘルムホルツ共鳴器として、スピーカーユニット背面の音を利用する形式です。共鳴により低音域が増強されますが、共鳴周波数より低い周波数では音が打ち消し合ってしまいます。小さな箱で豊かな低音が実現できますが、設計が悪いと癖の強い低音になる可能性があります。また、ポートから共鳴周波数以外の音漏れや風切り音が発生することもあります。市販スピーカーで最もよく使われる形式です。ダクトに制動材を詰めたものは、ダンプドバスレフ型と呼ばれます。

パッシブラジエーター型（ドロンコーン型）

パッシブラジエーター型は、バスレフ型のポートの代わりに、パッシブラジエーターを用いる形式です。パッシブラジエーターとは、サスペンションで支えられた振動板で、コーン型の場合はドロンコーンとも呼ばれます。動作原理はバスレフ型とほぼ同じですが、サスペンションが付いている点が異なります。パッシブラジエーターは共鳴周波数を低くしやすく、不要な音漏れや風切り音を抑えることができます。通常、駆動するスピーカーユニットと同等以上の振動板面積が必要です。

ASW 型（ケルトン型）

ASW型は、バスレフ型のスピーカーユニット前面に相当する部分を密閉箱またはヘルムホルツ共鳴器で塞いだ形式です。中高音域は出なくなるため、通常はサブウーファーとして使用されます。

共鳴管方式

共鳴管方式は、スピーカーユニット背面に共鳴管をつなぐ形式です。共鳴管はエンクロージャー内に折り畳まれて収められます。トランスミッションライン型などが代表的です。

バックロードホーン型

バックロードホーン型は、スピーカーユニット背面に断面積が大きくなっていく音道（ホーン）をつなぐ形式です。ホーンは通常エンクロージャー内に折り畳んで収められ、前面に開口部があります。設計や製作に手間がかかるため、自作スピーカーや高級スピーカーに使われます。

フロントロードホーン型

フロントロードホーン型は、スピーカーユニット前面にホーンを付けた形式です。背面も何らかのエンクロージャーに収める必要があり、密閉型と組み合わせるのが一般的です。バスレフ型と組み合わせたものはコンビネーションホーン型と呼ばれます。フロントロードホーン自体はエンクロージャーの形式とは言えませんが、低音ホーンは大型化しやすく、エンクロージャーと一体化して扱われることが多いです。

まとめ

エンクロージャーは、スピーカーユニットの性能を最大限に引き出すための重要な要素です。それぞれの形式には異なる特徴があり、用途や目的に合わせて適切なものを選ぶ必要があります。スピーカー選びの際には、エンクロージャーの種類にも注目すると良いでしょう。

参考文献

フォステクス社カタログ（2010年3月現在）内の解説ページ (PDF) p17-p18 、2010年7月25日閲覧

関連項目

平面バッフル
密閉型
バスレフ型
ASW型
共鳴管方式
バックロードホーン型
フロントロードホーン型

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