エンゲルスバーリ製鉄所

エンゲルスバーリ製鉄所：スウェーデンの鉄鋼史を今に伝える世界遺産

エンゲルスバーリ製鉄所（スウェーデン語: Engelsbergs bruk）は、スウェーデン・ヴェストマンランド地方のエンゲルスバーリ村に位置する、歴史的な製鉄所です。1681年にPer Larsson Gyllenhöökによって建設され、19世紀末まで操業を続けました。その歴史的価値が認められ、1993年にユネスコの世界遺産に登録されました。

中世からの鉄鋼生産の歴史

エンゲルスバーリ周辺地域における鉄鋼生産は、中世にまで遡ると考えられています。13世紀には、地元の農民たちが原始的な溶鉱炉を用いて、自らの農具を作るために鉄を生産していました。16世紀には、スウェーデンで初めて棒鋼の生産が開始され、17世紀にもその生産は継続されました。

中世のスウェーデン政府は、農民による棒鋼生産を制限する一方で、自治都市の住民による工場建設を推進しました。1681年の製鉄所建設も、この政策に沿ったものであり、経済的に豊かな住民層による銑鉄と棒鋼の生産が活発化しました。その生産量は、1695年の135トンから1767年には264トンへと大きく増加しました。

ベッセマー法導入後の変遷

1860年代にベッセマー法がスウェーデンに導入されると、多くの製鉄所が衰退を余儀なくされましたが、エンゲルスバーリ製鉄所は生き残りに成功しました。しかし、施設の老朽化が進み、1919年には製鉄所としての役割を終えることとなりました。

世界遺産としての価値

エンゲルスバーリ製鉄所は、300年以上にわたりスウェーデンの鉄鋼生産を支えてきた歴史を持ち、当時の建物が数多く現存しています。その数は50以上にも及び、例えば、1750年に建設された2階建ての木造建築で、下見板張りの壁と黒色の鉄板が特徴的な住宅や、1829年建築の醸造所などがあります。

エンゲルスバーリ製鉄所は、以下の世界遺産登録基準を満たしていると評価されました。

(4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例であること。

エンゲルスバーリ製鉄所は、スウェーデンの鉄鋼史における重要な足跡を今に伝える、貴重な文化遺産です。

外部リンク

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