エンドユーザー

エンドユーザーとは

エンドユーザーとは、コンピューティングプラットフォーム上のアプリケーション、データ、サービスの最終的な消費者、つまりテクノロジー製品を実際に使用する人を指します。末端消費者、最終消費者、または最終顧客とも呼ばれます。

顧客との違い

エンドユーザーは、製品を購入した顧客とは異なります。顧客は商品を購入しても必ずしも使用するとは限りません。例えば、動物園の飼育係がゾウの餌を購入する場合、顧客は飼育係ですが、エンドユーザーはゾウです。契約書などでは、エンドユーザーは再販業者ではない者を指します。この定義では、飼育係に餌を売った業者は非エンドユーザーであり、飼育係がエンドユーザーとなります。

エンドユーザー使用許諾契約（EULA）

エンドユーザー使用許諾契約（EULA）では、エンドユーザーはソフトウェアをインストールする再販業者や、ソフトウェアを購入して管理する組織とは区別されます。

ITにおけるエンドユーザー

エンドユーザーという言葉は、一般的にコンピュータアプリケーションの文脈で使用され、システムオペレーター、システム管理者、データベース管理者、IT専門家、ソフトウェアの専門家、コンピュータ技術者など、製品の利用を支援または保守するユーザーとは対照的な意味で用いられます。エンドユーザーは通常、製品設計者のような技術的な知識やスキルを持ちません。このため、設計者が忘れがちな機能や、顧客が不満を感じる機能が生じることがあります。

情報技術においては、エンドユーザーは通常の意味での「顧客」ではなく、顧客の従業員であることが多いです。例えば、大規模な小売企業が従業員が使用するソフトウェアパッケージを購入した場合、その企業はソフトウェアを購入した「顧客」ですが、エンドユーザーは実際にそのソフトウェアを仕事で使用する企業の従業員です。

防衛関連製品におけるエンドユーザー

特定のアメリカの防衛関連製品および情報は、ITARおよびEARに基づき、米国政府からの輸出承認が必要です。ライセンスを輸出するには、最終用途証明書を取得するために、エンドユーザーと用途の両方を特定する必要があります。英国では、エンドユーザーアンダーテイキング（EUU）という製品ライセンスに付属する文書が存在します。

ソフトウェア工学におけるエンドユーザー

ソフトウェア工学では、エンドユーザーは中心的な概念の一つです。ソフトウェアを最終的に使用する人々を「エンドユーザー」のペルソナとして定義することで、ユーザーの特徴を考慮した設計が可能になります。想定ユーザー、対象ユーザーとも呼ばれます。特に、プログラムを広く大衆向けに販売する場合は、エンドユーザーは技術的な経験や事前の訓練がほとんどないものとして想定されることが多いです。

エンドユーザーと情報システムの管理

エンドユーザーは、情報システムの管理の複雑さに寄与する3つの主要な要因の一つです。1950年代には、エンドユーザーはメインフレームと直接やり取りせず、コンピュータの専門家がプログラムを実行していました。しかし、2010年代には、エンドユーザーは管理情報システムや情報に対し、自身のニーズを技術部門に助言するようになりました。これにより、各リソースを誰が管理するのか、MIS部門の役割は何なのか、エンドユーザーとMIS部門間の最適な関係は何なのかといった新しい問題が生じています。

エンドユーザーのエンパワーメント

「エンドユーザー」という概念は1980年代後半に登場し、多くの議論を呼んでいます。課題の一つは、高度な機能を追加する一方で、初心者が誤ってデータベースを消去しないように制約を追加し、ユーザーに自由度を与えることです。この現象は、コンピュータ製品とソフトウェアの「消費」の結果として現れました。

1960年代と1970年代のコンピュータユーザーは、プログラミングの専門家やコンピュータサイエンティストでした。しかし、1980年代、特に1990年代後半から2000年代初頭にかけて、一般の人々が個人用や仕事用のコンピュータデバイスとソフトウェアを日常的に使用するようになりました。ITスペシャリストは、この変化に対応する必要があります。

2010年代には、ユーザーは操作するシステムをより詳細に制御し、問題を自分で解決し、ニーズに合わせてシステムをカスタマイズしたいと考えるようになりました。ただし、コンピュータやソフトウェアの知識がないために、システムやデータを破損させるリスクもあります。

企業がユーザーにアピールするためには、新製品やソフトウェアの発売、更新に合わせてエンドユーザーを適応させ、彼らの意見を考慮する必要があります。プログラマーとエンドユーザーの間でパートナーシップを形成し、双方が製品を最大限に活用できるようにすることが重要です。

公共図書館も、カードカタログのデジタル化や電子書籍の導入など、テクノロジーの影響を受けています。図書館は、Web 2.0やデータベースのスキルを既存の司書に教育したり、IT専門家を雇用したりする必要があります。

エンドユーザー向けドキュメント

エンドユーザー向けドキュメント（マニュアルやガイドブックなど）は、ユーザーがシステムの特定の側面を理解し、必要なすべての情報を一箇所で提供することを目的としています。しかし、利用可能な情報が広範で、一貫性がなかったり、曖昧である（数百ページのマニュアルなど）ため、多くのユーザーが情報過多に陥っています。このため、正しい行動方針を取ることが困難になっています。製品やサービスを開発する際には、この点に留意する必要があります。

ユーザーが参照しやすいドキュメントを作成するための重要なポイントは以下の通りです。

読者がセクションを見つけやすいように、具体的なタイトルとサブタイトルを使用する。
ビデオ、スクリーンショット、テキスト、リンクを活用して、デバイスやプログラムの使用方法を分かりやすく説明する。
専門用語や頭字語を避け、基本的な指示から順に、平易な言葉で情報を構造化して提供する。中級・上級者向けの情報には専門用語を使用できるが、初出時に定義やスペルアウトを行う。
ヘルプガイドの検索、情報の特定、アクセスを容易にする。
明確な最終結果を説明する（例：「プログラムが正しくインストールされると、アイコンが画面の左隅に表示され、LEDが点灯する」）。
初心者から上級者まで、さまざまな熟練度のユーザーが、製品やサービスのインストール、使用、トラブルシューティングを段階的に行えるように、詳細な手順を示す。
製品のウェブサイトへのURLを提供し、追加のヘルプやリソースを提供する。

マニュアルが大きすぎる、専門用語が理解できないなどの理由で、ユーザーがドキュメントを参照しないことがあります。また、マニュアルがコンピュータやソフトウェアの知識を前提としている場合、ユーザーは困惑し、誤った問題を報告する可能性があります。これにより、企業はソフトウェアの「実際」の問題ではなく、「認識された」問題に焦点を合わせることになります。

エンドユーザーのセキュリティ

2010年代以降、ユーザーのセキュリティとプライバシーが重視されています。コンピュータが人々の生活において果たす役割が増加するにつれて、人々はラップトップやスマートフォンを使い、オンラインで予約や購入を行い、情報を検索するようになりました。これらの活動は、企業や政府、個人によって監視される可能性があり、プライバシー侵害、個人情報の盗難、詐欺、脅迫などの深刻な問題につながる可能性があります。

企業もまた、製品やサービスの設計、製造、マーケティング、販売にコンピュータを使用しており、バックオフィスプロセス（人事や給与など）でもコンピュータを活用しています。したがって、個人や組織が、コンピュータネットワークを介して保存、使用、送信する情報やデータが安全であることが重要です。

しかし、ソフトウェアとハードウェアの開発者は、ユーザーフレンドリーで、ほぼすべてのデバイスで24時間365日アクセス可能で、真に安全なシステムを開発する上で多くの課題に直面しています。ファイアウォールや暗号化などのセキュリティ対策を実施していても、セキュリティリークが発生する可能性があります。安全なシステムを作成することの複雑さは、人間の行動が常に合理的で予測可能とは限らないという事実に起因します。高度なセキュリティシステムでも、悪意のある者が従業員に電話をかけ、ソフトウェア会社の探偵を装ってパスワードを聞き出すことがあります。これは「フィッシング」と呼ばれる詐欺行為です。また、安全なシステムを使用していても、従業員が会社の電子ファイルをUSBドライブに入れて持ち出し、紛失した場合、会社のデータが侵害される可能性があります。

したがって、開発者は、情報セキュリティとシステムセキュリティを確保するために、ユーザーにとって直感的なシステムを作成する必要があります。

エンドユーザーのセキュリティを確保するためのもう一つの重要なステップは、人々と従業員にセキュリティの脅威と、それらを回避する方法、自分自身と組織を保護する方法を教育することです。機能とリスクを明確に説明することで、ユーザーは製品の使用中に意識を高め、情報に基づいた行動をとることができます。

エンドユーザーのセキュリティを確保するための注意点として、以下の点が挙げられます。

管理者オプションとしての自動ログイン
コンピューターやプログラムがユーザーの個人情報やHTTP Cookieを「記憶」するオートフィルオプション
不審なメールや添付ファイルを開くこと
特にWi-Fi接続を使用している場合、メールが第三者に監視される可能性があること
安全でないWi-Fiや公衆Wi-Fiネットワークの使用
脆弱なパスワードの使用
ウイルスなどの悪意のあるプログラム

実施されているセキュリティ対策が強力であっても、ユーザーの選択と行動は情報の安全性に大きな影響を与えます。したがって、情報に基づいたユーザーとは、自身が使用しているシステムを保護し、最高のセキュリティを実現できるユーザーのことです。

エンドユーザーのセキュリティの重要性と組織への影響を考慮し、英国政府は公務員が政府のネットワークとコンピュータを使用する際に、セキュリティ意識を高めるためのガイドラインを設定しました。これは特定のセクターを対象としていますが、この種の教育活動は、あらゆるタイプのユーザーにとって有益です。

ReimersとAnderssonの研究では、セキュリティの「ベストプラクティス」に関する繰り返し教育が、エンドユーザーのネットワークセキュリティ遵守意識に大きな影響を与えることが示されています。

エンドユーザーアンダーテイキング（EUU）

エンドユーザーアンダーテイキング（EUU）とは、ユーザーが誰であるか、なぜ製品を使用しているのか、どこに住んでいるのか（またはどこで働いているのか）を示す文書です。この文書は、エンドユーザーのビジネスに関与する権限のある人物が記入し、署名する必要があります。すべての文書は英語であるか、有効な英語翻訳が添付されている必要があります。通常、EUUは製品ライセンスとともに送信されます。