エンバーミング (漫画)

エンバーミング -THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-

『エンバーミング』は和月伸宏による青年向け少年漫画で、19世紀のヨーロッパを舞台に、人造人間の創造と運命を描いています。この漫画は、和月の「少年漫画の基本は笑顔とハッピーエンド」という信念とは裏腹に、死や復讐といったテーマを扱っているのが大きな特徴です。

物語の背景

物語の舞台は、19世紀の欧州。科学者ヴィクトル・フランケンシュタインの名を冠した人造人間が、禁書に記された実験をもとに生み出されます。エンバーミングとは日本語で「遺体衛生保全」を指し、この作品では死体と雷を用いた恐怖の実験が描かれています。特に、「人造人間に進んで関わるのは悪人か狂人のどちらかだけ」というテーマが根底に流れています。

ストーリー

物語は、大英帝国ハイランド地方で始まります。主人公ヒューリーは、幼い頃に家族を人造人間に殺され、その復讐を誓います。彼は親友レイスと共に復讐に立ち向かうものの、親友も命を落としてしまい、ヒューリー自身も命を失います。しかし、彼はドクター・ピーベリーによって人造人間として蘇り、再び復讐の旅に出る決意をします。

ヒューリーとともに旅をするのは、人造人間の調整に挑むアシュヒトと彼の幼馴染であるエルム。彼らはロンドンで起こる様々な事件に巻き込まれ、切り裂きジャックを巡る騒動にも関与します。物語の中で、人造人間としての運命と生と死の本質が探求されます。

キャラクター

作品には多くの魅力的なキャラクターが登場します。

• - ヒューリー: 人造人間にされた復讐者。本作の主人公の一人で、優しさを持ちながらも復讐心に燃えています。
• - エルム: 皮膚機能特化型の人造人間。彼女は強い戦闘能力を持ちながら、過去の自己を取り戻そうとする葛藤を抱えています。
• - アシュヒト: エルムの幼馴染で、彼女を再人間化しようと試みる冷静な青年。彼の無表情の裏には複雑な感情が隠されています。

結末

物語は重厚なテーマと暗い結末に向かいます。ヒューリーは自らの運命に対抗しながら、全ての人造人間を倒すべく奮闘。しかし、その代償として彼自身も失われてしまいます。最終的に、彼の思いを受け継いだジョン＝ドゥもまた、同じ運命に翻弄されることになるのです。

読み切り版

本作は、読み切りとして発表された2編の作品を基に『ジャンプスクエア』で連載されました。これらの短編は類似のテーマを持ちながら、異なる角度から人造人間の物語を描いています。

まとめ

『エンバーミング』は、和月伸宏が描くユニークな復讐劇であり、人造人間というテーマを通じて人間の存在意義、死、復活のあり方といった根源的な問いを投げかけます。独特のキャラクター群と重厚なテーマは、読者に強烈な印象を残すことでしょう。

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