エンリケ2世 (ナバラ王)

エンリケ2世：ナバラ王国の苦難と再興への道

エンリケ2世（スペイン語：Enrique II, 1503年4月18日 - 1555年5月25日）は、16世紀前半のナバラ王国の名目上の国王でした。父はナバラ王フアン3世（ジャン・ダルブレ）、母は女王カタリナ（カトリーヌ）であり、彼はその長子として生まれました。また、アルブレ領主としても知られ、アンリ・ダルブレ（Henri d'Albret）とも呼ばれました。

激動の即位と王位回復への試み

1517年、エンリケ2世は母カタリナ女王の崩御を受け、王位を継承します。しかし、当時のナバラ王国はアラゴン王フェルナンド2世によって占拠されており、その支配下からの脱却は容易ではありませんでした。エンリケ2世はフランス王フランソワ1世の庇護を受けながら、名目上のナバラ王として苦難の道を歩むことになります。

1516年にはノワイヨン、1518年にはモンペリエでナバラ王国の地位回復に向けた交渉が行われましたが、いずれも実を結びませんでした。そこで、1521年、エンリケ2世は自らの主権を取り戻すべく軍を派遣します。一時的にフランス軍の支援を得て領土を奪還したものの、最終的にはスペイン軍によって再び奪い返されてしまいました。この戦いの後も、エンリケ2世は王位回復への執念を燃やし続けました。

フランスとの関係強化と結婚

1525年、エンリケ2世はパヴィアの戦いに参戦し、捕虜となってしまいますが、脱出に成功します。翌1526年には、フランス王フランソワ1世の姉であるマルグリットと結婚し、フランスとの関係をより一層強固なものとしました。この結婚は、後のナバラ、そしてフランスの歴史を大きく左右することになります。マルグリットとの間には、後のフランス国王アンリ4世の母となるジャンヌ・ダルブレ（ナバラ女王フアナ3世）が生まれます。

ユグノーへの理解と晩年

エンリケ2世は、ユグノー（フランスのプロテスタント）に対して理解を示していたと言われています。宗教改革の嵐が吹き荒れるヨーロッパにおいて、彼の宗教的寛容さは特筆に値します。1555年5月25日、エンリケ2世はポーで息を引き取りました。彼の死後、娘のジャンヌ・ダルブレがナバラ女王を継承し、ユグノーを保護するなど、父の遺志を受け継いでいきました。

エンリケ2世の生涯は、ナバラ王国の独立と再興に捧げられました。スペインによる占拠、フランスの庇護、そして王位回復への挑戦。彼の苦難に満ちた道のりは、ナバラの歴史に深く刻まれています。また、フランス王家との繋がりを通じて、その後のフランスの歴史にも大きな影響を与えた人物として、記憶されるべきでしょう。


参考文献
* レイチェル・バード 『ナバラ王国の歴史』 彩流社、1995年

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