エンリコ・フェルミ炉

エンリコ・フェルミ炉について

エンリコ・フェルミ炉は、アメリカ合衆国ミシガン州のデトロイト郊外に位置するエンリコ・フェルミ原子力発電所内に建設された高速増殖炉の試験炉です。この原子炉は、その先進的な設計と過去に起こった事故によって知られています。

建設と商業運転開始

1956年に建設が開始され、1963年8月23日に初めて臨界に達しました。その後、DTEエナジーによって「フェルミ1」として命名され、1966年8月7日に商業運転が開始されました。

炉心溶融事故

商業運転開始から間もない1966年10月5日、エンリコ・フェルミ炉は炉心溶融という重大な事故に見舞われました。この事故は、原子炉内の冷却材流路に設置されていた耐熱板が剥がれ、冷却材の流れを妨げたことが原因で発生しました。炉心溶融事故が発生した最初の事例の一つとされていますが、制御棒が速やかに挿入されたため、事態は深刻化せずに済み、放射性物質の大気放出もありませんでした。しかし、この事故は、原子炉の安全性に関する重要な教訓となりました。また、事故後には蒸気発生器において伝熱管の破損や溶接不良といった問題も明らかになりました。

商業運転再開と閉鎖

事故後、設備の改修が行われ、1970年には商業運転が再開されました。しかし、1972年11月29日には閉鎖され、2032年までの予定で廃炉作業が進められています。短期間の商業運転ではありましたが、高速増殖炉の技術開発と安全性に関する貴重なデータを提供しました。

事故に関するドキュメンタリー

エンリコ・フェルミ炉の炉心溶融事故は、その重大さからドキュメンタリー映画の題材にもなりました。『我々はデトロイトを失うところであった』というタイトルで、事故の危機的な状況と、その後の影響について描かれています。

まとめ

エンリコ・フェルミ炉は、高速増殖炉の開発における重要な一歩でありましたが、同時に原子力発電における安全性の重要性を再認識させる出来事でもありました。この原子炉の経験は、後の原子炉設計や安全対策に大きな影響を与えました。

参考文献

Nuclear Power (2nd ed.), Walter C Patterson, Penguin Books, 1983
John G.Fuller (1976). We almost lost Detroit. Ballantine Books. ISBN 978-0345252661
ジョン・G.フラー 田窪雅文 訳 (1978). 原子炉災害 : ドキュメント. 時事通信社
原子力安全委員会発行『原子力安全白書』平成5年版
もんじゅ行政判決第７外国で起こった炉心溶融ないし炉心崩壊事故

関連項目

原子炉
* 原子力事故

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