エヴリバディズ・ロッキン

『エヴリバディズ・ロッキン』は、カナダ出身の著名なミュージシャン、ニール・ヤングによる14枚目のスタジオ・アルバムです。この作品は1983年8月1日にリリースされ、ヤングが結成したバンド、ショッキング・ピンクスと共にレコーディングされました。その収録内容は、主にロカビリー・スタイルの楽曲で構成されており、カヴァー曲とオリジナル曲が織り交ぜられています。アルバム全体の収録時間は約25分と非常に短く、ニールにとっても最もコンパクトな作品となっています。

アルバムの背景

『エヴリバディズ・ロッキン』は、ヤングの過去の作品とは大きく異なっている特徴があります。前作の『トランス』ではエレクトロ・ロックの要素が強く、また後続の『オールド・ウェイズ』は純粋なカントリー・アルバムとして制作されています。これに対し、『エヴリバディズ・ロッキン』は、そのスタイルの多様性から離れたところで1980年代のヤングの典型的な作品として位置付けられることが多いです。

アルバムの制作にあたっては、前年度にリリースされた『トランス』の商業的な失敗が影響を及ぼしていました。その結果、所属していたゲフィン・レコードとの間には軋轢が生まれ、次作としてヤングが提出したカントリーアルバムの『オールド・ウェイズ』は却下されてしまいます。レコード会社はロックンロール・アルバムを要求し、ヤングはその期待に応える形で制作を進めていきました。

音楽的アプローチ

ヤングはスタジオに入り、ジミー・リードの「ブライト・ライツ、ビッグ・シティー」やエルヴィス・プレスリーの「ミステリー・トレイン」といった初期のロックンロールを彷彿とさせる楽曲を制作しました。このアルバムは、50年代の音楽スタイルを取り入れ、リバーブの効いたヴォーカルやバックコーラスが特徴です。この作品に収録されているほとんどの楽曲は、彼のオリジナルであり、特に「カインダ・フォンダ・ワンダ」は、彼が妻を楽しませるために書いた楽曲として知られています。ヤングは以前から「ワンダリン」という曲を持っており、これは『アフター・ザ・ゴールド・ラッシュ』の時代のもので、様々なライブパフォーマンスでも披露されています。

デビューシングルの「ワンダリン」と「クライ・クライ・クライ」は音楽ビデオも制作されましたが、MTVではあまり放送されることはありませんでした。『エヴリバディズ・ロッキン』のサポートツアーは、観客からの評判が芳しくなく、逆境の中で行われましたが、ヤングはこのアルバムの内容を忠実にライブで演奏しました。

アルバムの完成

しかし、このアルバムの制作過程ではレコーディングセッションが時折キャンセルされ、結果的にヤングはアルバムを未完成の状態でリリースすることとなりました。シングルとしてリリースされた曲は後のコンピレーションアルバム『ラッキー13』にも収蔵されています。1995年、ヤングはこのアルバムがどのように影響を与えたかについて語り、自身のロカビリーに対する姿勢をも語っています。

収録曲と参加ミュージシャン

アルバムにはニール・ヤングが主に作詞・作曲を手がけた楽曲が収録されています。参加メンバーの中には、ピアノやバックコーラスを担当したラリー・バイロムや、アップライト・ベースを演奏するティム・ドラモンド、さらにはサックスのベン・キースなどが含まれています。アルバムの全体的な制作を担当したのはエリオット・メイザーで、彼らの協力によってニール・ヤングのビジョンが具体化されました。

このようにして、『エヴリバディズ・ロッキン』はニール・ヤングの音楽スタイルを新たに模索した作品として、彼のキャリアにおいて特異な位置を占めています。

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