エーベルスヴァルデ・トロリーバス

エーベルスヴァルデ・トロリーバスは、ドイツ東部、ブランデンブルク州の都市エーベルスヴァルデにおいて市民の足として親しまれている電気動力のバス交通システムです。2020年時点で、ドイツ国内で現役のトロリーバス路線はわずか3つしかなく、その中でもエーベルスヴァルデの路線は重要な存在と言えます。この路線は、地元公共交通事業者のバルニマー・バス有限会社（Barnimer Busgesellschaft、BBG）によって運営されています。

この地におけるトロリーバスの歴史は古く、最初の試みは20世紀初頭に遡ります。1901年3月22日、アルセンプラッツ（現在のカール＝マルクス＝プラッツ）とエーベルスヴァルデ駅を結ぶ区間で営業運転が開始されました。しかし、当時の技術が未発達であったため、運行は数ヶ月で中止せざるを得ませんでした。使用されていた車両や設備はデンマークへ譲渡されています。

その後、エーベルスヴァルデに再び電気動力の公共交通機関を導入する計画が持ち上がります。1910年代には市営発電所の完成を機に路面電車の建設案が進められました。しかし、将来的な利用客の増加に対応できるかという懸念から、最終的にはトロリーバスの再導入が決定されました。そして、1940年11月3日に新たなトロリーバス路線として本格的な営業運転が開始されました。

第二次世界大戦中を含む混乱期を経て、トロリーバスは市民の重要な移動手段として定着します。利用客の増加に対応するため、1942年からはトレーラーを連結して輸送力を増強する運用も行われました。このトレーラー連結は東ドイツ時代の1985年まで続けられましたが、同年に導入された連節バスに置き換えられる形で姿を消しました。

2021年現在、エーベルスヴァルデ・トロリーバスは主に2つの系統で運行されており、市の主要な地域を結んでいます。

車両面では、現代的な低床構造の連節バスが導入されています。2024年現在、主力となっているのはソラリスとセゲレックが共同で開発したノンステップ連節トロリーバス「トロリーノ18」です。この車両は、架線からの集電だけでなく、内蔵するリチウムイオン充電池の電力のみでも走行可能な設計となっています。これにより、架線が設置されていない区間でも排気ガスを出さずに運行できるという、環境性能と柔軟性を兼ね備えています。トロリーノ18は2010年から2012年にかけて12両が導入され、さらに2023年には運用区間の拡大を見越して2両が増備されました。

過去に使用された車両の一部は、歴史的な価値が認められ保存されています。ベルリン歴史交通保存協会によって動態保存されている車両も存在し、イベントなどでその姿を見ることができます。また、引退した車両が他都市へ譲渡される例も多く、トロリーノ18が導入される以前に活躍したノンステップ連節バス「MAN NGE 152」は、2011年から2012年にかけてハンガリーの首都ブダペストのトロリーバス路線へ譲渡され、現在も運行に供されています。

エーベルスヴァルデ・トロリーバスは、一度は途絶えながらも復活し、時代の変化や技術の進歩を取り入れながら市民の移動を支え続けている、ドイツにおけるトロリーバスの貴重な事例と言えるでしょう。

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