エーリヒ・プリーブケ

エーリヒ・プリーブケは、1913年生まれのナチス親衛隊員であり、第二次世界大戦における残虐行為で悪名高い人物です。ドイツ生まれの彼は、ナチス党に入党後、ゲシュタポでイタリア語通訳として勤務し、後にイタリアでのドイツ大使館に勤務しました。流暢なイタリア語能力を生かし、イタリア警察との連絡将校を務めていた彼は、戦争終盤の1944年、ローマで起こった悲劇的な事件の中心人物となります。

当時、イタリアのパルチザンによるドイツ兵の殺害事件を受け、アドルフ・ヒトラーは報復を命令。ローマのゲシュタポ長官ヘルベルト・カプラーは、320名ものイタリア市民の銃殺リストを作成し、その実行をプリーブケに命じました。プリーブケは、この命令に基づき、アルデアティーネ洞窟において、335名のイタリア一般市民を虐殺しました。犠牲者の中には、70名以上のユダヤ人も含まれていたとされています。この残虐行為は、フォッセ・アルデアティーネの虐殺として歴史に刻まれています。

戦争終結後、カプラーは逮捕され終身刑を宣告されましたが、プリーブケは捕虜収容所から脱走し、アルゼンチンに逃亡。約50年間、自由な身分で生活を送りました。しかし、1994年、ABCニュースの報道がきっかけとなり、アルゼンチン政府に逮捕。1995年にはイタリア政府に引き渡され、裁判にかけられました。裁判では、常に「命令に従っただけ」と主張し、自らの行為に対する責任を一切認めませんでした。

1998年、プリーブケは終身刑を言い渡されましたが、既に85歳という高齢であり、健康状態も悪かったため、刑務所での服役は免除されました。弁護士のパオロ・ジャキーニの自宅で刑期を終えることとなり、そこで余生を過ごしました。2013年、100歳の誕生日を迎えた直後、自宅で亡くなりました。

プリーブケの死後、彼の葬儀は多くの問題を引き起こしました。バチカンもローマも葬儀の開催を拒否し、アルゼンチン政府も遺体の受け入れを拒否したため、最終的に、ローマ教皇庁との関係が悪化している聖ピオ十世会で葬儀が行われました。しかし、この葬儀は、極右団体と反ナチ団体間の衝突という、憂慮すべき事態を引き起こしました。

プリーブケの生涯と死は、第二次世界大戦におけるナチスドイツの残虐行為、そしてその責任の所在について、私たちに深い問いかけを投げかけています。彼の行動は、戦争犯罪の重大さを改めて認識させるものであり、歴史から学ぶことの重要性を示すものです。また、彼の逃亡とその後の人生は、正義の実現の難しさ、そして加害者と被害者、歴史と現代社会との複雑な関係性を浮き彫りにしています。彼の物語は、私たちに、歴史を正しく理解し、二度とこのような悲劇が繰り返されないよう努めることの大切さを訴えかけているのです。

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