エーヴベリー

エーヴベリー：古代の巨石遺跡群

エーヴベリーは、イギリス南西部ウィルトシャーに位置する、新石器時代の巨大な環状列石（ヘンジ）です。ストーンヘンジと並び、イギリスを代表する先史時代の遺跡として知られています。その規模はヨーロッパ最大級であり、観光名所であると同時に、ネオペイガニズムの聖地としても重要な役割を果たしています。

遺跡の概要

エーヴベリーは、紀元前2600年頃に建設されたと考えられています。遺跡は、巨大な土塁と溝で囲まれたヘンジの中に、3つのストーンサークルが配置された構造をしています。

ヘンジ: 直径約420メートルの巨大な環状の土塁と溝。
外側のストーンサークル: ヘンジの内側に位置する、直径約330メートルの巨大なストーンサークル。98個の巨石で構成されていた。
内側のストーンサークル: 遺跡の中心部に位置する、2つの小さなストーンサークル。

遺跡の本来の目的は不明ですが、儀式や祭典に使用されていたと考えられています。周辺には、ウェスト・ケネット・ロング・バロウやシルバリーヒルなど、より古い時代の遺跡も存在し、広大な先史時代の景観を形成しています。

歴史

エーヴベリーは、鉄器時代にはすでに放棄されていましたが、ローマ時代にも何らかの活動が行われていた形跡があります。中世には、遺跡の周囲に村が形成され、次第に遺跡内部にも広がっていきました。中世後期から近世にかけては、宗教的・実用的な理由から、多くの巨石が破壊されましたが、17世紀の古物研究家ジョン・オーブリーやウィリアム・ステュークリーによって、破壊前の遺跡の様子が記録されました。20世紀には、アレクサンダー・ケイラーによる考古学的調査が行われ、遺跡の復元が進められました。

位置と環境

エーヴベリーは、マールボロとカーンの町からそれぞれ約10キロメートルの距離に位置しています。ケネット川上流の白亜質の丘陵地帯にあり、周辺には多くの泉や水路が存在します。遺跡は、標高約160メートルの低い丘の上に位置し、東にはマールボロ・ダウンズが広がっています。この地域は、新石器時代および青銅器時代の遺跡が集中しており、1986年にはストーンヘンジとともに世界遺産に登録されました。

建設

エーヴベリーの建設は、紀元前2600年頃に始まり、その後1000年以上にわたって使用されたと考えられています。この遺跡は、単一の計画に基づいて建設されたのではなく、複数の段階を経て徐々に拡張されていきました。エーヴベリーのような大規模な記念碑の建設は、当時すでに安定した農業経済が確立されていたことを示しています。記念碑の建設には、膨大な労働力と資源が必要であり、それを支えるだけの余剰生産力があったことを意味します。

ヘンジ

エーヴベリーのヘンジは、直径約420メートルで、内部に溝を持つ巨大な環状の土塁です。溝の幅は約21メートル、深さは約11メートルに達します。土塁は、溝を掘って出た土砂を積み上げて作られました。土塁の頂上は平らではなく、これは建設作業員の技術的な問題によるものとする説と、意図的な設計であるとする説があります。

ストーンサークル

エーヴベリーには、外側のストーンサークルと、内側の2つのストーンサークルがあります。

外側のストーンサークル: 直径約330メートルの巨大なストーンサークルで、98個の巨石で構成されていました。巨石の重さは40トンを超えるものもあり、高さは3.6メートルから4.2メートルまで様々です。
* 内側のストーンサークル: 遺跡の中心部に位置する、2つの小さなストーンサークル。北側のストーンサークルは直径約98メートルで、南側のストーンサークルは直径約108メートルでした。

アベニュー

エーヴベリーからは、2つのアベニュー（並木道）が伸びています。ウェスト・ケネット・アベニューは、ヘンジの南東の入り口から続いており、ベッカムトン・アベニューは、ヘンジの西の入り口から伸びています。アベニューは、エーヴベリーと周辺の聖域を結びつける役割を果たしていたと考えられています。

現在の用途

エーヴベリーは、現在、ナショナル・トラストによって管理されており、一般公開されています。遺跡は、ネオペイガニズムの聖地として、多くの信者に崇拝されています。特に、夏至などの重要な祝日には、多くの人々が儀式を行うために集まります。また、ニューエイジの信者たちも、エーヴベリーを訪れ、その神秘的なエネルギーを感じようとしています。

観光産業

エーヴベリーは、年間約25万人の観光客が訪れる観光名所となっています。ナショナル・トラストは、遺跡周辺の商業主義を抑制し、景観の保護に努めています。遺跡の近くには、ナショナル・トラストが経営するショップと、ニューエイジグッズを販売するヘンジ・ショップがあります。また、幽霊が出ると噂されるパブもあり、観光客に人気があります。

まとめ

エーヴベリーは、古代の神秘とロマンに満ちた遺跡です。その巨大なストーンサークルは、訪れる人々を魅了し、古代の人々の精神世界へと誘います。ストーンヘンジとともに、イギリスの先史時代を代表する遺跡として、これからも多くの人々に愛され続けることでしょう。

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