オイルフィルター

オイルフィルター：エンジンの血液を清浄に保つ心臓部

エンジンオイル、自動変速機油(ATF)、油圧作動油など、機械の潤滑に用いられる油は、使用に伴いスラッジ、摩耗粉、異物などで汚染されます。これらの不純物はエンジンの性能低下や故障の原因となるため、オイルフィルターはエンジンの正常な作動に不可欠な部品です。自動車やオートバイを始め、軽飛行機や船舶、産業機械など、あらゆる油圧機械に広く用いられています。

オイルフィルターの種類と歴史

初期のオイルフィルターは、オイルポンプ吸入口に金属製のスクリーンを置くだけの簡素なものでした。頻繁なオイル交換が必須だった時代の名残です。1923年、Ernest SweetlandとGeorge H. Greenhalghが実用的なオイルフィルター「Purolator」を開発。これはバイパスフィルターと呼ばれるもので、オイルの一部をフィルターに通す仕組みでした。全てのオイルを濾過するには時間がかかりましたが、無濾過よりは格段に信頼性が高まりました。現在でも大型ディーゼルエンジンなどで、フルフローフィルターとの併用が見られます。

バイパスフィルターが登場してから約20年後、全てのオイルを濾過するフルフローフィルターが開発され、現在主流となっています。フルフローフィルターは、エンジンの油圧やオイル量に合わせてサイズや濾過精度が設計されるため、大型エンジンではバイパスフィルターと併用するデュアルフィルター構成も存在します。

フルフローフィルターには、フィルター詰まり時にオイルを迂回させるリリーフバルブと、エンジン停止後のオイル漏れを防ぐアンチドレーンバルブが備わっているのが一般的です。

オイルフィルターは大きく分けて以下の種類があります。

スクリーン式: オイルパン内のストレーナーに金属メッシュを用いた最もシンプルなタイプ。原付バイクなど一部車両では現在も採用されています。
内蔵式: エンジン内部に濾紙フィルターを直接内蔵する方式。旧式のオートバイなどに多く見られます。
カートリッジ式: 着脱可能なカートリッジにフィルターを収納し、フィルターのみ交換する方式。整備性の向上に貢献しました。
スピンオン式: ねじ込み式でフィルターごと交換する方式。整備性と簡素化に優れ、現在最も一般的なタイプです。廃棄物増加が課題となっています。
新型カートリッジ式: スピンオン式を踏襲しつつ、フィルターのみ交換可能なタイプ。廃棄物削減に貢献します。
移動式フィルターベース: エンジンブロックへの直接取り付けが困難な場合に、オイルフィルターを別途設置するためのベースです。
磁力式: 磁石で金属粒子を捕獲するタイプ。濾紙フィルターと併用されることが多いです。
沈澱式: オイルより重い不純物を沈殿させる方式。オイルパンがこれに相当します。
遠心分離式: 遠心力で不純物を分離する方式。ホンダ・スーパーカブなどに採用例があります。
インライン式: 後付けでオイルラインに追加する方式。小排気量車や旧式車などに用いられます。

濾過材の種類

フィルターの濾過材も種類があります。

濾紙: 蛇腹状に折り畳まれた濾紙を用いる最も一般的なタイプ。交換時期の判断が容易です。
合成繊維: スポンジ状の合成繊維を用いるタイプ。圧力損失が低く耐圧性が高いのが特徴です。
* 金属メッシュ: レーザー加工されたステンレスメッシュを用いるタイプ。洗浄して再利用可能なため、モータースポーツなどで用いられます。

オイルフィルターの選び方とメンテナンス

オイルフィルターを選ぶ際には、車両の仕様に適合したものを選ぶことが重要です。サイズ、ねじピッチ、種類などを確認しましょう。また、交換時期は使用状況によって異なりますが、一般的にはオイル交換と同時に行うのが推奨されます。交換時期の目安は、車の取扱説明書やオイルフィルターのパッケージに記載されています。定期的な交換で、エンジンの寿命を延ばしましょう。

オイルフィルターは、一見地味な部品ですが、エンジンの健康を維持するために重要な役割を担っています。適切な選択とメンテナンスによって、エンジンの性能と寿命を長く保ちましょう。

もう一度検索