オイルポンプ

オイルポンプ：機械を動かす生命線

オイルポンプは、その名の通り油を扱うポンプです。しかし、その役割は機械の種類によって大きく異なります。本稿では、油圧機構と内燃機関におけるオイルポンプの役割、構造、そして進化について解説します。

油圧機構におけるオイルポンプ

油圧機器では、動力源となる高圧の油圧を発生させるためにオイルポンプが不可欠です。オイルポンプは機械的に油を押し出し、その圧力を発生させます。単位時間当たりの押し出し回数を調整することで、圧力レベルを制御できます。この圧力は、油圧シリンダーなどの作動部に油を送り込み、機械的な動作を生み出します。精密な制御が必要な機器ほど、オイルポンプの性能が重要となります。

内燃機関におけるオイルポンプ

内燃機関、特に自動車のエンジンでは、オイルポンプはエンジンオイルをエンジン内部の各部に供給する重要な役割を担います。クランクシャフトやカムシャフトからの動力を利用して駆動され、エンジンオイルの潤滑、冷却、洗浄を担保します。

オイルポンプの構造は大きく分けて内接ギア式と外接ギア式の2種類があり、それぞれ異なる歯型（トロコイド歯型、インボリュート歯型など）を使用しています。また、駆動方式もクランクシャフト同軸タイプと、チェーンやギアなどで駆動される別置きタイプが存在します。近年は、軽量化・コンパクト化のため、クランクシャフト同軸タイプではチェーンカバーと一体化したり、別置きタイプではバランスシャフトと一体化したりする設計も増えています。

オイルポンプの吐出量と圧力は、エンジンの回転数に比例して増加します。しかし、潤滑に必要な油圧は回転数に比例するとは限りません。そこで、過剰な油圧を逃がすリリーフバルブが設けられています。リリーフバルブには、ポンプ内部で吸入側にオイルを戻す内リリーフ式と、ポンプ外部に排出する外リリーフ式があります。また、近年では、高回転時に吐出量を減らすことで駆動ロスを低減する可変容量式オイルポンプも採用され始めています。

オイルポンプの下流にはオイルフィルターが設置され、エンジンオイル中の不純物を除去します。しかし、油温が低い場合やフィルターが目詰まりを起こした場合、油圧が上昇しフィルターが破損する可能性があります。そのため、オイルフィルターにはバイパスバルブが設置され、一定圧力以上になるとオイルがフィルターを通らずにエンジンへ直接供給されるようになっています。

さらに、オイルポンプにはストレーナーが一体化されているものもあります。ストレーナーはオイルパンから吸い上げられたオイルから大きな異物を除去する役割を果たし、オイルポンプとオイルフィルターの保護に貢献します。従来のストレーナーはメッシュが露出していましたが、近年は吸い込み口付きのカバーが設置され、エア吸い込みを防止する設計になっています。また、軽量化のため、従来の板金製から樹脂製への変更も進んでいます。

黎明期のエンジンの中には、自動式のオイルポンプが搭載されておらず、ドライバーが手動でオイルを供給する必要があったものもあります。有名な例としては、ハーレーダビッドソン（サイド[[バルブ]]エンジン）や陸王などがあります。これらのバイクでは、オイルの供給タイミングがエンジンの状態に大きく影響するため、ライダーの熟練度が求められました。

2ストローク機関においても、分離給油方式ではオイルポンプが用いられます。4ストローク機関と同様にクランクシャフトから駆動されますが、スロットルの開度と連動してオイル吐出量が変化するリンク機構を持つ点が特徴です。これにより、クランクケース内の重要な部位への集中給油や、スロットル開度とは独立したオイル供給量の調整が可能になり、特に混合給油方式で問題となるエンジン[[ブレーキ]]時の焼き付きを抑制する効果があります。

オイルポンプは、一見すると地味な部品ですが、機械の正常な動作に不可欠な存在です。その技術は、常に進化を続けています。

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