オウエン・テューダー

オウエン・テューダー：テューダー朝の礎を築いた男

オウエン・テューダー（ウェールズ語: Owain Tudur, 1400年頃 - 1461年2月2日）は、イングランド王家テューダー家の祖として知られる重要な人物です。ウェールズにルーツを持つ彼は、複雑でドラマチックな生涯を送りました。その生涯は、王室との密接な関係、政治的陰謀、そして薔薇戦争における活躍と、英国史に大きな影響を与えました。

ウェールズ貴族の出自と王宮への道

テューダー家は、古くからウェールズに根付いた家系でした。その祖先は、グウィネズ王サウェリン・アプ・イオルウェスの部下として戦った戦士にまで遡ります。オウエン自身は、オワイン・グリンドゥールが起こした反乱への関与によって没落した一族の中で育ちました。しかし、彼の父メレディスの尽力により、ロンドンに移住し、王宮への出仕を許されます。

当初は宮廷の雑用係でしたが、1415年のアジャンクールの戦いに参加。その戦功によって、ヘンリー5世から従騎士に任命され、地位を向上させました。ヘンリー5世の死後も、未亡人となったキャサリン・オブ・ヴァロワ王太后に仕え、1423年頃からは事実上の婚姻関係を結びました。この関係から、少なくとも3人の子供が生まれました。しかし、王太后は再婚が許されていなかったため、彼らの関係は公には認められず、1437年にキャサリンが亡くなるまで続きました。この頃、オウエンは家名を英語風の「テューダー」に変更しています。

キャサリン王太后との関係と薔薇戦争

キャサリン王太后との関係は、オウエンの運命を大きく左右しました。王太后の死後、彼は密通の罪で投獄されましたが、後に釈放。王室府官吏に任命されると、息子のエドマンドとジャスパーは、ヘンリー6世との良好な関係を築き、事実上の兄弟として認められるようになりました。1452年には、エドマンドをリッチモンド伯、ジャスパーをペンブルック伯に叙爵するなど、テューダー家は王室の庇護を受ける上級貴族へと昇りつめました。

薔薇戦争が勃発すると、オウエンはランカスター派に加わり、ウェールズの兵を率いて戦いました。しかし、1461年のモーティマーズ・クロスの戦いでヨーク派のエドワード（後のエドワード4世）に敗れ、捕らえられて処刑されました。彼の死は、テューダー家の運命に影を落とすかに見えましたが、彼の息子たち、特にエドマンドの子、ヘンリー・テューダー（後のヘンリー7世）の運命を大きく変えることはありませんでした。

テューダー朝への系譜

ヘンリー6世とその王太子エドワードが相次いで亡くなると、オウエンの孫にあたるヘンリー・テューダーは、ランカスター家の最後の男子となりました。伯父ジャスパーの助けを得てブルターニュに逃れたヘンリーは、反リチャード3世の勢力拡大を図り、1485年のボズワースの戦いで勝利。こうして、テューダー朝が幕を開け、オウエン・テューダーの血筋はイングランド王位に繋がりました。

ヘンリー7世は、祖母キャサリンの墓に「オウエン・テューダーと結婚」という記述を追加することで、オウエンとの関係を公認しました。オウエン・テューダーは、直接王位に就くことはありませんでしたが、その生涯と選択は、イングランドの王室と歴史に深い影響を与えたことは間違いありません。彼のウェールズの血は、イングランド王ヘンリー7世、そしてテューダー朝を通じて英国の歴史に刻まれることになったのです。

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