オウム食

オウム食（おうむしょく）についての考察

オウム真理教の出家信者における食文化には、特異なルールと哲学が組み込まれています。信者は原則として一日一食を基本にしており、特別な場合にのみ二食まで許可されます。教団ではこの食事スタイルを「聖者の食事」と位置づけ、肉や魚を一切排除した食事が提供されていました。主食は胚芽米で、根菜や豆腐、納豆、海藻といった健康的な食材が中心でした。こうした食事内容は年間を通じてほとんど変わらず、信者たちは一定の料理に慣れ親しむことになります。

調理には味付けが行われることはなく、信者は必要に応じて個別に醤油を使用することが可能でしたが、その行為自体が「味への執着を絶つ修行」とみなされたため、ほとんどの信者は醤油を使うことはありませんでした。教団の教えに従い、出された食事は全て残さずに食べることが求められました。牛乳は「殺生」に当たるとされて禁じられ、代替として豆乳が提供されました。また、1994年からはヨーグルト菌を含む製品も禁止されました。

出家信者の料理の一例として、1989年には、米飯どんぶり一杯、根菜の水煮、納豆、海苔、ひじき、豆乳が一食の内容として考えられていました。このような質素な食事に対して、外部からの刺激と誘惑を排除する教団の哲学が強く表れています。

一方で、教団の指導者や幹部たちは、出家信者が禁じられていた食材をひそかに楽しんでいたという事実もあり、教団内の食文化には明確な二重基準が存在しました。麻原彰晃はファミリーレストランを好んで訪問し、その家庭的な食事を楽しんでいたことが知られています。信者たちが厳しい食生活の中で耐えている一方で、特殊な立場にある人々が贅沢を味わっている様子は、教団の内外での矛盾を浮き彫りにしています。

出家信者に供される食事は「供物」と呼ばれ、食べる行為自体は「供養」と呼ばれていました。食事は教団の施設で提供され、麻原の教えが映し出されたビデオが流れる中で、信者たちは無言で食事を行わなくてはなりませんでした。これは単なる食事以上の意味を持ち、精神的な修行として位置づけられていました。

その一方で、食文化の独自性から、出家信者たちは長期間の不潔さや衛生面での問題も抱えていました。体味の変化はあったものの、入浴をしない信者も多く、外部からの印象とは裏腹の実態がありました。また、出家信者同士の 親しい関係性は、時折、規律を超えた行動に繋がることもあったとされています。

麻原が唱えていた「サットヴァ食品」は、特別な儀式を通じて浄化された食品を指し、部屋の四方に設置されたスピーカーを使って麻原のマントラを流し、食品を浄化するという独特な信念がありました。教団はサットヴァ食品により、信者たちが持つ罪やカルマを取り除くとされ、信者たちはこの食品に金銭を払うことを厭わなかったのです。

オウム真理教の食文化は、肉や魚を排除した徹底的な菜食主義の実践だけではなく、厳しい戒律が求められ、さらには精神的な修行とも結びついていたのです。こうした特異な食文化を通じて、彼らの人生において重要視されていたことが伺えます。

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