オオサシガメ

オオサシガメ（学名：Triatoma rubrofasciata）は、カメムシ目サシガメ科に分類される昆虫です。この科の多くの種は他の昆虫などを捕食する肉食性ですが、オオサシガメは日本に生息するサシガメの中では例外的に、ネズミなどの脊椎動物から血液を吸うという特徴を持ちます。その和名が示す通り、比較的大きな体を持つサシガメの仲間です。

形態

成虫は雌雄ともに体長が約20mm前後で、サシガメ科の中でも大型に属します。体色は全体的に赤褐色を基調としていますが、腹部の各節には特徴的な褐色の帯模様が見られます。翅は腹部の先端にわずかに届かない長さです。この大きさや色合いから、他の一般的なカメムシとは区別しやすい種類と言えます。

分布

日本国内では、主に南西諸島での生息が確認されています。具体的には、沖縄本島や宮古島、石垣島、西表島、与那国島などから記録があります。最近では岩手県でも発見例が報告されており、分布域に関するさらなる調査が待たれます。日本国外では、台湾、中国南部、東南アジアにかけて広く分布しており、さらに人間の活動に伴ってハワイ諸島（オアフ島、カウアイ島）にも侵入し、定着しています。

生態と生活史

オオサシガメの主な生息場所は、ネズミ類の巣です。成虫、幼虫ともに、ネズミから吸血することで栄養を得ています。

繁殖と成長

卵は長径約2mmの楕円形で、上端には蓋があり、褐色をしています。産卵からおよそ20〜30日で孵化し、幼虫が蓋を押し上げて出てきます。幼虫は6回の脱皮を経て成虫になりますが、脱皮のためにはその都度大量の血液を吸う必要があります。卵から成虫になるまでの期間は約180〜195日と比較的長く、成虫になってからの寿命は約120日程度とされています。

ヒトからの吸血

通常はネズミを宿主としますが、ネズミが巣を放棄したり、駆除されたりして主要な宿主がいなくなった場合、オオサシガメは代替としてヒトからも吸血することがあります。活動は主に夜間に行われ、日中は木造家屋の柱や壁の隙間などに隠れています。ヒトから吸血する際には、皮膚の上を歩き回ったり、寝具や衣服の中に潜り込んだりすることは稀で、多くの場合、対象から少し離れた場所から細長い口吻を伸ばして、露出している皮膚の部分から吸血します。吸血された箇所は、著しい赤みや腫れが生じ、焼けるような強いかゆみや痛みを伴うことがあります。

日本における現状

かつて木造家屋が多かった時代には、ネズミの生息環境を通して人里近くでも見られることがあったようですが、近年、建築様式が木造からコンクリート造りなどに変化したことで、ネズミの生息環境やオオサシガメの隠れ家となる場所が減少し、それに伴って日本では見かける機会が極めて稀になっています。環境省のレッドリストには記載されていませんが、国内では希少な存在となりつつあります。

補足

中南米に分布するオオサシガメの近縁種には、シャーガス病などの病原体を媒介するものも知られていますが、日本に生息するオオサシガメについては、現時点ではヒトへの病原体媒介性は確認されていません。しかし、吸血による皮膚症状は強く現れるため、注意が必要です。

まとめ

オオサシガメは、日本国内では他に類を見ない脊椎動物吸血性のサシガメであり、その生態は非常にユニークです。かつては都市部でも見られたようですが、環境の変化によって現在では希少な存在となりつつあります。

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