オオヒラウスユキソウ

オオヒラウスユキソウ

オオヒラウスユキソウ（大平薄雪草、学名：Leontopodium miyabeanum）は、キク科ウスユキソウ属に分類される多年草であり、日本の高山植物の一つです。その名前は、主な自生地である北海道の後志地方にある大平山に由来しています。

この植物は、かつては同じウスユキソウ属の近縁種であるハヤチネウスユキソウ（早池峰薄雪草）の変種とみなされていた時期もありました。しかし、その後の詳細な研究により、花のつく茎に生える葉の数や形状、そして雌雄異株の傾向が強い点などがハヤチネウスユキソウとは明らかに異なることが判明し、現在では独立した別種として扱われています。

特徴

オオヒラウスユキソウは、一般的に高さ10センチメートルから30センチメートル程度の茎を直立させます。この茎は途中で分枝することなく、全体にわたって白い綿毛が密生しているのが特徴です。茎には葉が互い違いに（互生して）ついており、その数は一つの茎に15個から30個ほどになります。葉の形は、先端に向かって急に細くなる特徴的な形をしています。

花期は盛夏の8月です。この時期になると、茎の先端に頭花をつけます。オオヒラウスユキソウは雌雄異株の傾向が強く、一つの株に雄花だけをつける頭花、または雌花だけをつける頭花が多く見られます。ただし、ごくまれに一つの株に雌雄両方の花を持つ個体も存在します。

頭花の周りには、白い綿毛が密生した星形に見える苞葉が広がります。この苞葉は、頭花を包み込むように縁につき、その先端は丸みを帯びています。苞葉の数は、近縁種であるハヤチネウスユキソウと比較して多いとされています。

その外見は、日本のウスユキソウ属の植物の中で、ヨーロッパアルプスを代表するエーデルワイス(Leontopodium alpinum)に最も似ていると言われています。白い綿毛に覆われた星形の苞葉が、エーデルワイス特有の雰囲気を醸し出しています。

分布と生育環境

オオヒラウスユキソウは、非常に限られた地域にのみ分布する固有種です。その生育地は、北海道の後志総合振興局管内にある大平山と、夕張山地にある崕山（きりぎしやま）のわずか二箇所に限られています。

これらの山岳地帯の中でも、特に高山帯の石灰岩がちな岩場を好んで生育します。急峻な岩の割れ目や礫地に根を張り、厳しい高山環境に適応して命をつないでいます。

保全状況

このように、分布域が極めて限定されており、特定の生育環境に依存しているため、オオヒラウスユキソウは絶滅の危機に瀕しています。環境省が定めたレッドリストにおいては、2012年版で絶滅危惧II類（VU：絶滅の危険が増大している種）に指定されています。これは、そのままの状態が続けば、将来的に野生での絶滅の危険性が高いことを意味しており、その保全に向けた取り組みが不可欠な植物と言えます。

この美しい高山植物は、特定の地質と気候条件が組み合わさった北海道の特別な場所でしか見ることのできない、貴重な日本の自然遺産の一つと言えるでしょう。

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