オガサワラオオコウモリ

オガサワラオオコウモリ (Pteropus pselaphon)

オガサワラオオコウモリは、哺乳綱翼手目オオコウモリ科オオコウモリ属に分類される、日本固有のコウモリです。小笠原諸島の中でも、北硫黄島、父島、母島、南硫黄島にのみ生息しています。2008年には聟島での発見例もあり、他の島からの飛来と考えられています。

形態

体長は20～25cm、前腕長は13～15cm、体重は380～440g程度です。全身は暗褐色で、背中や腰、胸部、腹部には光沢のある灰白色の体毛が混じります。南硫黄島の個体群は赤みを帯びた明るい体色を持つことが報告されていますが、これは幼獣が暗色であることや、昼間の活動による日焼け、栄養状態などが影響していると考えられています。吻は幅広く、上顎の切歯はやや大きく、前方の小臼歯は退化しています。

生態

常緑広葉樹林に生息し、夜行性です。昼間は樹上で休みますが、南硫黄島の個体群は昼間も活動することがあります。これは、南硫黄島には天敵となる猛禽類がいないことや、食物が少ないために活動時間を増やしているためと考えられています。冬季には、体を温め合うために群れを作って休みます。植物食で、ヤシ類の葉やガジュマル、グアバ、シマグワ、タコノキ、バナナなどの果実、花の蜜などを食べます。父島では、外来種や栽培種の植物を主な食物としています。南硫黄島では、シマオオタニワタリやナンバンカラムシの葉、タコノキの果実などを食べるのが観察されています。また、ハチジョウススキの茎を食べることも報告されています。南硫黄島の個体群では、歯の摩耗が激しい個体が多く見られ、食物不足から未成熟な果実も食べていることが示唆されています。

繁殖

繁殖様式は胎生です。1～3月頃に交尾を行い、初夏に1度に1頭の幼獣を産むとされています。周年繁殖の可能性も指摘されており、南硫黄島では6月に妊娠したメスが発見されています。

人間との関係

オガサワラオオコウモリは、バナナやマンゴーなどの果実を食害する害獣とみなされることがあります。また、宅地開発による生息地の破壊、食用としての狩猟、観光客による撹乱、農作物保護用の網に絡まることなどが原因で生息数が減少しました。近年では生息数は安定していますが、1996～2002年には、防護ネットに絡まった個体が少なくとも31頭確認され、うち3頭が死亡しています。父島では外来種への依存度が高いため、これらの防除対策が進むと飢餓に陥る可能性も指摘されています。父島では1970年に絶滅したと考えられていましたが、1986年に再発見されました。硫黄島にも分布していましたが、第二次世界大戦以降は確認されていません。オオコウモリ属は1990年にワシントン条約附属書IIに掲載され、日本では1969年に国の天然記念物に指定、2009年には種の保存法により国内希少野生動植物種に指定されました。父島、母島の一部は小笠原諸島鳥獣保護区に指定されています。父島では1990年に約5頭、1995年に75頭が確認され、1998～2000年には130～150頭、2001～2002年には65～80頭と推定されています。母島では最大3頭程度の確認例しかなく、絶滅に近いと考えられています。北硫黄島では2001年に25～50頭、南硫黄島では2007年および2017年の調査で約100頭と推定されています。

現状

環境省レッドリストでは、絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。

関連情報

* 哺乳類レッドリスト (環境省)

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