オケラ (植物)

オケラ（朮、白朮）とは

オケラ（学名: Atractylodes lancea）は、キク科オケラ属に分類される多年草です。日本を含む東アジアに広く分布し、山野や草原に自生します。古くから生薬として利用されてきたほか、春の若芽は山菜としても親しまれてきました。また、正月の伝統行事にも深く関わっており、日本人にとって馴染み深い植物です。

特徴

草丈: 30cmから100cm程度まで成長します。
全体: 全体に白い軟毛があり、特に春の芽出しの頃には目立ちます。
根茎: 木質で硬く、太く長い根茎を持ち、節があって特有の芳香があります。
葉: 互生し、上部の葉は短く卵形から広楕円形、下部の葉は長い葉柄がついて羽状に3～5裂します。葉の縁には細かいトゲ状の鋸歯があります。
花: 秋（9～10月）に、白色または淡紅紫色の筒状花をつけます。アザミに似た房状の頭状花序が特徴的です。雌雄異株で、両性株と雌株があります。
果実: 痩果で、暗褐色、狭楕円形。長い伏毛と羽毛状の冠毛があります。

分布と生育地

日本では本州、四国、九州に分布し、平地から低山にかけて、日当たりと水はけの良い山野や丘陵地に自生しています。

栽培

比較的栽培は容易で、日当たりが良く、湿気を嫌います。種まきは3～5月頃が適期で、有機質の土壌に植えます。水やりは週1回程度の降雨があれば不要ですが、真夏の直射日光や西日を避けるように注意が必要です。繁殖は秋に株分けで行います。

利用

食用: 春の若芽は山菜として食用にされます。アクがなく、独特の芳香が特徴です。茹でてお浸しや和え物、天ぷらなど様々な料理に使われます。また、塩漬けにして保存することもできます。
薬用: 晩秋の根茎は、生薬として利用されます。利尿、健胃、整腸作用があるとされ、漢方薬や屠蘇散の材料にも用いられます。
その他: 花はドライフラワーにも利用されます。

生薬としてのオケラ

オケラの根茎は、古くから「朮（じゅつ）」という生薬として利用されてきました。特に、オケラ属の植物の根茎は、蒼朮（ソウジュツ）または白朮（ビャクジュツ）と呼ばれ、漢方薬に配合されています。

蒼朮: ホソバオケラやシナオケラなどの根茎を指します。香りが強く、日本でも栽培されています。
白朮: オオバナオケラの根茎を指します。オケラの根茎も白朮として扱われることがあります。

薬効成分:

根茎には精油成分が含まれており、アトラクチロンやセスキテルペンなどが含まれています。これらの成分が、胃液の分泌を促し、消化を助けると考えられています。また、漢方では、消化管内の停水を改善する駆水剤として用いられます。

民間療法:

民間では、悪心、嘔吐、下痢、関節痛、健胃、整腸、利尿、むくみ、発汗解熱などに効果があるとして、根茎を煎じて服用する用法が知られています。

オケラと人間文化

万葉集: 『万葉集』にもオケラを詠んだ歌があります。
白朮祭: 京都八坂神社では、大晦日に白朮（オケラの根茎）を焚く白朮祭が行われ、その火を火種に新年を祝う風習があります。
屠蘇散: 正月のお屠蘇に使われる屠蘇散の主原料としても知られています。
カビ除け: 梅雨時には、室内のカビ除けにも利用されていました。

オケラは、食用、薬用、そして文化的な側面からも、日本人の生活と深く関わってきた植物です。

近縁種

オケラには、以下のような近縁種があります。

オオバナオケラ
* ホソバオケラ

これらの植物も、オケラと同様に薬用や食用として利用されています。

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