オスマン帝国外伝〜愛と欲望のハレム〜

オスマン帝国外伝〜愛と欲望のハレム〜

『オスマン帝国外伝〜愛と欲望のハレム〜』は、2011年から2014年にかけてトルコで制作・放映された、壮大なスケールで描かれるテレビドラマシリーズです。原題は「Muhteşem Yüzyıl（壮麗なる世紀）」、英題は「The Magnificent Century」として、世界中で愛されています。

概要

本作は、オスマン帝国第10代皇帝スレイマン1世の治世下、帝都コンスタンティノープル（イスタンブール）のトプカプ宮殿を舞台に、後宮（ハレム）で繰り広げられる女性たちの愛憎、嫉妬、権力闘争を描いた作品です。単なる後宮のドラマに留まらず、スレイマン1世のヨーロッパ諸国との戦争や権力争い、そして彼の人間的な苦悩や葛藤も織り交ぜた、重厚な歴史大河ドラマとして展開されます。

トルコ語オリジナル版は1話あたり90分から150分と非常に長く、全139話で構成されています。トルコ国内での放送は大反響を呼び、数々の賞を受賞しました。

皇帝スレイマン1世を演じたのは、トルコ人俳優のハリット・エルゲンチュ。彼は、即位から崩御までを演じきり、その演技力が高く評価されました。また、ヒュッレム・スルタンを演じたのは、トルコ系ドイツ人女優のメルイェム・ウゼルリ。奴隷から皇帝の寵愛を受け、皇妃にまで上り詰めるという波乱万丈な人生を演じ、一躍スターダムへと駆け上がりました。

日本では、各エピソードを分割し、日本語字幕を付けたものが2017年からテレビ放送・ネット配信されています。

評価と批判

本作は、史実を基にしながらも大幅な脚色が加えられたフィクション作品です。トルコ国内での放送開始当初から、その大胆な脚色が保守層やオスマン家の子孫、当時の首相であったレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領などから強い批判を受け、放送打ち切り論争にまで発展しました。しかし、その一方で、娯楽作品としての完成度の高さから、幅広い層からの支持を集め、高視聴率を記録する大ヒット作となりました。

批判の主な内容

スレイマン1世の人物像: ドラマでは、スレイマン1世が道楽好きで女性に弱い人物として描かれていますが、史実では彼はハーレムよりも戦場で過ごした時間の方が長く、ドラマの描写は歴史への侮辱であるという批判がありました。

ドラマへの擁護

時代劇ドラマは娯楽作品であり、史実を忠実に再現したドキュメンタリーではない。視聴率と広告収入のために、視聴者の興味を引く要素に重きを置いてフィクションを創作するのは当然である。歴史を学びたいのなら、歴史学者の書物を読むべきだという意見もありました。

キャスト

スレイマン1世: ハリット・エルゲンチュ
ヒュッレム・スルタン: メルイェム・ウゼルリ / ヴァーヒデ・ペルチン
母后 ハフサ・アイシェ: ネバハット・チェフレ
マヒデブラン: ヌル・フェタホール
ハティジェ・スルタン: セルマ・エルゲンチュ

主要スタッフ

制作: TIMS PRODUCTIONS

登場人物

皇帝の家族と妃たち

スレイマン1世: オスマン帝国の第10代皇帝。道楽好きで女性からの誘惑に弱い人物として描かれる一方、有能な君主としての側面も持ち合わせています。
ヒュッレム: ルテニア人（現在のウクライナ）出身の奴隷。その美貌と知性でスレイマン1世の寵愛を受け、最終的には皇妃にまで上り詰めます。
母后 ハフサ・アイシェ: スレイマン1世の母。ハレムの秩序維持を最優先に考え、ヒュッレムを警戒しています。
マヒデブラン: スレイマン1世の第二夫人。皇子ムスタファの母であり、ヒュッレムの出現によって自身の地位が脅かされることを恐れています。
ハティジェ・スルタン: スレイマン1世の妹。大宰相イブラヒムとの禁断の愛に苦悩します。

皇子・皇女たち

シェフザーデ・ムスタファ: マヒデブランとスレイマン1世の息子。皇位継承者として期待されていますが、ヒュッレムの策略によってその運命は翻弄されていきます。
ミフリマーフ・スルタン: ヒュッレムとスレイマン1世の娘。美しく聡明で、母ヒュッレムの野望を支える存在となります。

後宮の人々

スンビュル・アー: 後宮の宦官長。ヒュッレムに忠実に仕え、彼女の陰謀を助けます。
ニギャール・ハートゥン: 後宮の女官長。冷静沈着な性格で、ヒュッレムをサポートします。

皇帝の近臣たち

イブラヒム: スレイマン1世の腹心であり、親友。鷹匠頭から大宰相にまで上り詰めますが、ヒュッレムとの対立によって悲劇的な運命を辿ります。

シリーズ構成

トルコで放送されたオリジナル版は、以下の構成となっています。

シーズン1: 全24回
シーズン2: 全39回
シーズン3: 全40回
シーズン4: 全31回

日本での放送・配信

日本では、チャンネル銀河やHuluなどで放送・配信されています。鈴木麻矢が翻訳を担当しています。

スピンオフドラマ

『新・オスマン帝国外伝〜影の女帝キョセム〜』は、本作のスピンオフ作品であり、オスマン帝国史上最も権力を持った女性キョセム・スルタンの生涯を描いています。舞台セットや使用楽曲は本編と一部共通です。

関連作品

篠原千絵の漫画『夢の雫、黄金の鳥籠』は、本作と同様にオスマン帝国を舞台としており、ヒュッレムを主人公とした物語が描かれています。

参考文献

鈴木董『オスマン帝国 イスラム世界の「柔らかい専制」』講談社（講談社現代新書）、1992年。
林佳代子『オスマン帝国 500年の平和』講談社（講談社現代新書）、2016年。
* 小笠原弘幸『オスマン帝国 繁栄と衰亡の600年史』中央公論新社（中公新書）、2018年。

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