大宰相

大宰相の概要

大宰相（だいさいしょう）は、オスマン帝国における最高位の官職で、スルタンの直下に位置し、その権力を代行する役割を担っていました。この名称はペルシャ語の「ヴェズィール」に由来し、英語では「Grand Vizier」と称されます。大宰相は、帝国の政策決定や実行において中心的な役割を果たしました。

大宰相の職務と権限

大宰相はオスマン帝国の政務を統括し、他の宰相を招集して様々な政治的課題に取り組むことができました。宮廷内では、「聖堂宰相」とも称され、御前会議はトプカプ宮殿内の聖堂で行われたためこの名称が付けられました。また、大宰相の公邸はバーブ・アーリー（大宰相府）として知られています。

大宰相はスルタンに対して忠誠を誓い、原則としてスルタン以外によって解任されることはありませんでした。このため、彼の権限は非常に強大であり、オスマン帝国の運営において不可欠な存在であったと言えます。

大宰相の歴史

オスマン帝国の初期には「大宰相」という呼称は存在せず、単に「宰相」とのみ称されていました。初めて「大宰相」と呼ばれたのは、チャンダルル家出身のハイレッディン・パシャによるもので、以降この称号はスルタンの代理としての特別な地位を示すために使われるようになりました。当初は「ヴェズィール・イ・アーザム」と呼ばれていましたが、次第に「サドラザム」と呼称されるようになりました。この二つの名称はどちらも同じ意味を持っています。

大宰相の称号と役割の変遷

大宰相はオスマン帝国の長い歴史の中で「サドル・イ・アーリー」や「ベキル・イ・ムトラク」など、さまざまな名称で呼ばれてきました。これらの名称は、大宰相が国家の実権を持つ者としての役割を示すものであり、政権の実施において重要な地位を占めていました。

特に、キョプリュリュ時代（1656年 - 1703年）には、複数の大宰相が実権を握り、スルタンの権力は相対的に弱められ、支配層の中でも分散されていました。この時期の大宰相たちは、国家の政策に大きな影響を及ぼしました。

近代化と大宰相の役割

19世紀に入ると、タンジマート（近代化改革）以降、大宰相は現代の西洋式政府における首相に近い役割を持つようになりました。このように、大宰相の職務は時代とともに変化し、オスマン帝国をより効果的に運営するための重要な機関としての位置を確立していきました。

大宰相は国家の顔とも言うべき存在であり、オスマン帝国の歴史を理解する上で極めて重要な役職であったといえるでしょう。

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