オズワルド・モズレー

サー・オズワルド・モズレー：イギリス・ファシスト同盟の指導者

サー・オズワルド・モズレー（1896年 - 1980年）は、20世紀イギリスを代表する政治家の一人であり、イギリス・ファシスト同盟の創設者として知られています。貴族階級出身の彼は、華麗なる経歴と波乱に満ちた人生を送りました。

生い立ちと初期の政治活動

モズレーは、裕福な準男爵家の出身です。ウィンチェスター・カレッジとサンドハースト陸軍士官学校を経て、第一次世界大戦に従軍しますが、戦闘機の事故で負傷し、軍隊を去ります。

1918年、わずか22歳で保守党から庶民院議員に当選。その後、保守党の大物政治家カーゾン侯爵の娘と結婚し、保守党内での地位を確立します。しかし、退役軍人への対応などをめぐる党内政策に失望し、1920年代半ばには妻と共に労働党へ転じます。

労働党でも議員として活躍し、1929年にはラムゼイ・マクドナルド内閣の閣僚に就任。失業問題対策を担当しますが、労働党の保守的な姿勢に不満を持ち、1930年に離党します。

イギリス・ファシスト同盟と第二次世界大戦

労働党を離れたモズレーは、独自の政治運動を展開。強力な政府による経済統制を主張し、新党を結成しますが、1931年の総選挙では敗北を喫します。

その後、ドイツとイタリアへの訪問を経て、1932年に党名を「イギリス・ファシスト同盟（BUF）」に変更。ファシズムを公然と掲げるようになります。世界恐慌による社会不安や労働党の内紛を背景に、BUFは支持者層を広げ、1934年には党員数1万人を超える勢力となります。

しかし、BUFの集会での暴力事件や、党内にあった反ユダヤ主義的な傾向、ナチスドイツのユダヤ人迫害の報道などから、世論の批判を招き始めます。BUFの制服もナチスを模倣したもので、批判の的となりました。

1939年、第二次世界大戦勃発。モズレーは政府への協力を呼びかけますが、1940年には「防衛規則18B」に基づき、逮捕・投獄されます。BUFも解散させられました。3年半の獄中生活を経て釈放されましたが、その後も政治活動は制限され続けました。

戦後と晩年

第二次世界大戦後、モズレーは著作を発表し、政治活動を再開しようと試みます。「ヨーロッパ諸国の連合」を唱え、移民反対を主張するなど、活動を続けました。しかし、ナチスとの関係が常に問題視され、大きな成果は残せませんでした。

晩年はパーキンソン病を患い、1980年にフランスで死去しました。

モズレーとナチス

モズレーは、ヒトラーやナチスと深い関係にあったと誤解されることも多いですが、実際には限られた接触しかありませんでした。公の場で反ユダヤ主義を主張したことはありませんでしたが、彼の運動には反ユダヤ主義者が多く、その点において批判を受けることとなりました。

人物像

長身でスポーツマンであったモズレーは、世界恐慌後の世界情勢に危機感を抱き、ファシズムこそが解決策だと信じていました。資本主義の限界と共産主義への警戒感から、ファシズムへの傾倒を深めていったと言えるでしょう。当時のイギリス世論においても、ファシズムへの共感は高かったことも彼の支持拡大に繋がりました。

家族

モズレーには、2度の結婚歴があります。最初の妻との間に3人の子供をもうけ、その長男は小説家となりました。2番目の妻との間には、国際自動車連盟会長を務めたマックス・モズレーを含む2人の子供がいます。

参考文献

松村赳、富田虎男『英米史辞典』研究社、2000年
ラベル, メアリー・S 著、粟野真紀子、大城光子 訳『ミットフォード家の娘たち―英国貴族美しき六姉妹の物語』講談社、2005年

モズレーの生涯は、イギリスの政治史、そして20世紀の歴史を理解する上で重要な一章です。彼の思想や行動、そしてその影響は、今もなお議論を呼び続けています。

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