マックス・モズレー

マックス・モズレー：F1改革の立役者と波乱の人生

マックス・ルーファス・モズレー（1940年4月13日 - 2021年5月23日）は、イギリスのレーシングドライバー、弁護士、実業家であり、国際自動車連盟（FIA）の第8代会長として知られています。彼の出自は、イギリスファシスト連合の指導者であったオズワルド・モズレーと、ミットフォード姉妹のダイアナ・ミットフォードを両親に持つ複雑なものでした。第二次世界大戦勃発の影響で幼少期は困難を極めましたが、オックスフォード大学で物理学を修めた後、ロンドン法学院で弁護士資格を取得。辣腕弁護士として活躍し、「ぶった斬りマックス」の異名を取ったほどです。

弁護士としての成功を背景に、モズレーは趣味であるモータースポーツにのめり込みます。フランク・ウィリアムズのチームでF2に参戦した経験を活かし、1969年には、アラン・リース、グラハム・コーカー、ロビン・ハードと共にフォーミュラカーコンストラクター・マーチを設立。F1への参戦を果たします。その後は、バーニー・エクレストンと共にF1コンストラクター協会（FOCA）の運営に携わり、エクレストンの法律アドバイザーとしても活躍しました。FISAとFOCAの対立（FISA-FOCA戦争）では調停役を務め、1981年のコンコルド協定締結に貢献するなど、F1界の発展に大きく貢献しました。

1991年にはFIA（当時FISA）会長に就任。16年に渡り会長職を務め、モータースポーツ界に大きな影響を与えました。彼の会長在任中は、「安全性の改善」と「コスト削減」を掲げ、様々な改革を断行しました。タイヤ、エンジン、電子制御装置などの性能規制を導入し、マシンの性能向上と開発費用の高騰に歯止めをかけようとしました。しかし、その強硬な改革姿勢は、メーカーやチームから反発を招くこともしばしばありました。

特に1994年シーズンのアクティブサスペンション規制変更は、アイルトン・セナとローランド・ラッツェンバーガーの事故死という悲劇と関連づけられ、モズレーのリーダーシップに批判が集まりました。また、2レース・エンジン規定やエンジン規格の統一など、メーカーにとって魅力的とは言えない規定の導入も、反感を買う要因となりました。2005年アメリカGPでのミシュランタイヤ問題における対応も、彼の強硬な姿勢が招いた問題として挙げられます。

モズレーの功績は、F1のコスト削減と安全性の向上に貢献したことですが、その一方で、彼の独断的な決定やメーカーへの厳しい姿勢は、メルセデス・ベンツ、ルノー、BMW、ホンダ、トヨタといったメーカーによるGPMA（グランプリ・メーカーズ・アソシエーション）結成という事態を引き起こしました。

2008年には、イギリスのタブロイド紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」によるセックススキャンダルの報道が大きな波紋を呼びました。ナチス風コスチュームを着用した売春婦とのSM乱交プレイのビデオが公開され、大きな社会問題となりました。裁判でモズレーは勝訴しましたが、このスキャンダルは彼のFIA会長再選を断念させ、表舞台から姿を消すきっかけとなりました。この事件は、タブロイド紙の行き過ぎた取材方法に対する批判を高める結果にも繋がりました。

2009年には、コスト削減案を巡ってF1チーム協会（FOTA）と対立し、FIA会長選挙には再出馬せず、16年間の会長職を終えました。その後は、後継者として推したジャン・トッドとの関係も微妙なものとなり、メディアへの露出も極端に減りました。2021年5月23日、81歳で死去。当初は末期がんによる死と報じられましたが、後日の検死で拳銃自殺であったことが判明しました。

マックス・モズレーは、モータースポーツ界に大きな影響を与えた人物です。彼の改革は、F1の安全性向上とコスト削減に貢献した一方で、強硬な姿勢やスキャンダルにより、多くの批判も浴びました。彼の功績と失敗は、現代のF1にも影を落としており、その複雑な人生は、今もなお議論の的となっています。彼の功罪は、今後もモータースポーツの歴史の中で語られ続けるでしょう。

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