オゼッラ・FA1B

オゼッラ・FA1B：F1世界選手権を駆け抜けた軽量級戦闘機

オゼッラ・スクアドラ・コルセは、1980年のF1世界選手権にFA1Bと呼ばれるフォーミュラ1マシンを投入しました。このマシンは、前年に投入されたFA1の改良型として開発され、設計は名高いデザイナー、ジョルジオ・ヴァレンティーニの手によるものです。FA1はデビュー当初から重量過多という課題を抱えており、十分なダウンフォースも得られていませんでした。これらの問題点を克服するため、チームオーナーのビンチェンツォ・オゼッラは新型マシンの開発を決定。それがFA1Bです。

開発：軽量化と空力性能の向上

ヴァレンティーニは、FA1の基本設計を踏襲しつつ、軽量化と空力性能の向上に重点を置いてFA1Bを設計しました。モノコックはFA1と同様にアルミニウム製ですが、よりコンパクトな構造となりました。特に注目すべきはサイドポンツーンの拡大です。この変更により、グラウンド効果が大幅に向上し、FA1と比較して5％以上のダウンフォース増加を実現したとオゼッラは主張しています。また、シャシー全体の軽量化も図られ、走行性能の向上に貢献しました。エンジンは信頼性の高いコスワースDFVエンジン、ギアボックスはヒューランド製と、基本的なメカニズムはFA1を踏襲しています。サスペンションもわずかな改良にとどめられています。合計4台のFA1Bが製造され、1980年に1台、1981年に3台がレースで使用されました。

レース戦績：完走率の低さが課題

FA1Bは1980年、第12戦イタリアグランプリでデビューしました。ステアリングを握ったのはエディ・チーバー。予選を通過し、決勝では12位で完走。オゼッラにとってこのシーズン唯一の完走となりました。残りのレースはすべてリタイアに終わっています。

1981年シーズンは、2台体制で参戦。複数のドライバーがマシンをドライブしました。31番車はミゲル・アンヘル・ゲーラ、ピエルカルロ・ギンザーニ、ベッペ・ガビアーニが、32番車はガビアーニ、ギンザーニ、ジョルジオ・フランシア、ジャン＝ピエール・ジャリエがそれぞれステアリングを握りました。このシーズン、ジャリエがドイツグランプリとイギリスグランプリで8位を獲得。これがFA1Bの最高位となりました。シーズン終盤には、新型のFA1Cが投入され、ジャリエがそのマシンに乗り換えています。ガビアーニはシーズン終了までFA1Bを使用し続けました。

まとめ：潜在能力を秘めたマシン

オゼッラ・FA1Bは、前モデルFA1の欠点を克服し、軽量化と空力性能の向上を実現したマシンでした。しかしながら、レースでの完走率は低く、その潜在能力を十分に発揮することはできませんでした。それでも、ジャリエによる8位入賞は、このマシンのポテンシャルを示す貴重な記録となりました。FA1Bは、F1の歴史においては脇役的な存在ではありますが、オゼッラチームの挑戦と技術開発の軌跡を象徴する重要な1台と言えるでしょう。

参考文献

Adriano Cimarosti: Das Jahrhundert des Rennsports. Autos, Strecken und Piloten. Motorbuch-Verlag, Stuttgart 1997, ISBN 3-613-01848-9.（ドイツ語）
David Hodges: Rennwagen von A–Z nach 1945. Motorbuch-Verlag, Stuttgart 1994, ISBN 3-613-01477-7.（ドイツ語）
David Hodges: A–Z of Grand Prix Cars. Crowood Press, Marlborough 2001, ISBN 1-86126-339-2.（英語）
Pierre Ménard: La Grande Encyclopédie de la Formule 1. 2. Auflage. Chronosports, St. Sulpice 2000, ISBN 2-940125-45-7.（フランス語）

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