オゼッラ・FA1L

オゼッラ・FA1L：1988年シーズンの苦闘

オゼッラ・スクアドラ・コルセは、1988年のF1世界選手権に、アントニオ・トマイーニが設計したオゼッラ・FA1Lを投入しました。このマシンは、チームにとって最後のターボエンジン搭載車となり、ドライバーには前年コローニから参戦したニコラ・ラリーニが起用されました。

開発とマシンの特性

FA1Lには、1983年にデビューしたアルファロメオ製V型8気筒1.5リッターターボエンジン「890T」が搭載されました。オゼッラは1984年からこのエンジンを使用していましたが、5シーズンを通して得られたポイントはわずか2点のみ。信頼性の低さが大きな課題でした。そのため、アルファロメオの親会社であるフィアットはエンジン供給を終了。オゼッラはエンジン使用の許可を得ましたが、アルファロメオではなく「オゼッラ・890T」として使用することになりました。

700bhpという高い出力を誇った890Tでしたが、FA1Lは深刻な問題を抱えていました。560kgという車重過多、空力性能の不足による高い空気抵抗、そしてV8ターボエンジンの特性である燃料消費の多さとターボラグが、マシンの戦闘力を大きく阻害しました。結果、FA1Lは「FAIL」という渾名で呼ばれるほど、自然吸気エンジン搭載車に比べ、パフォーマンスで劣る場面が多かったのです。特にコーナーリングスピードにおいては、自然吸気エンジン車の優位性が際立ちました。

レース戦績と苦戦

サンマリノGPから投入されたFA1Lは、まずフットボックス・レギュレーション違反とエンジンマウントポイントの違法変更により失格処分を受けました。モナコGPでは9位に入賞し、これがシーズン最高位となります。しかし、その後のレースでは苦戦が続きました。メキシコGPでは、標高3000mの高地におけるターボエンジンのアドバンテージを生かせず、予選落ちを喫するなど、マシンの潜在能力を十分に引き出せないレースが続きました。これは、オゼッラ・890Tの700bhpという高い出力にも関わらず、ベネトンなどの自然吸気エンジン搭載車に大きく遅れを取った結果を示しています。

ラリーニはシーズンを通して3回しか完走できず、モナコGPの9位以外ではイギリスGP19位、ポルトガルGP12位という結果に終わりました。前半戦でポイントを獲得できなかったため、予備予選への参加を余儀なくされ、ハンガリーGPとオーストラリアGPでは予備予選も突破できませんでした。スペインGPで記録した14位が予選最高位となり、ポールポジションのアイルトン・セナから2.945秒遅れという結果でした。この結果からも、FA1Lがいかに苦戦を強いられていたかがわかります。年間平均タイムは、ポールポジションタイムから5.8秒遅れでした。

まとめ

オゼッラ・FA1Lは、高い馬力を持つエンジンを搭載しながらも、車重過多や空力性能の不足、ターボラグなどの問題を抱え、1988年シーズンを大きく苦戦する形で終えました。このマシンは、オゼッラチームのF1におけるターボ時代を象徴する、そして終焉を告げるマシンとなりました。1989年には自然吸気エンジンのFA1Mへと進化しますが、その性能差は大きく、1988年シーズンはチームにとって忘れがたい、苦い経験となったことでしょう。

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