オッズ&ソッズ

ザ・フー『オッズ&ソッズ』：未発表音源で辿るバンドの軌跡

『オッズ&ソッズ』（Odds & Sods）は、ザ・フーが1974年に発表したコンピレーション・アルバムです。全英10位、全米15位を記録し、旧邦題は『不死身のハードロック』として知られています。

概要

本作は、ザ・フーが1964年のデビューから1973年までの間にレコーディングしたアウトテイクを集めた未発表曲集です。この期間に彼らが発表したオリジナル・アルバムは6作ですが、それ以外にも『Who's For Tennis?』（1968年）、『ライフハウス』（1971年）、『ロック・イズ・デッド～不死身のハードロック』（1972年）といったアルバムや、5曲入りEP（1970年）が未発表のまま存在し、膨大な数の未発表曲がストックされていました。

1974年当時、ピート・タウンゼントとロジャー・ダルトリーは映画『トミー』の製作、キース・ムーンは映画『スターダスト』への出演で多忙を極めていました。そのため、比較的スケジュールに余裕のあったジョン・エントウィッスルが、未発表曲の発掘と編集作業を担当することになりました。

収録曲は、ハイ・ナンバーズ時代のデビュー・シングル「ズート・スーツ」のB面に収録された「アイム・ザ・フェイス」を除き、上記4作品からのものが中心です。コンサートで披露されたり、タウンゼントのデモ・バージョンがソロ・アルバムに収録されたりして、一部の楽曲は既にファンに知られていました。

レコードには歌詞カードに加え、タウンゼント自身による各曲の解説が掲載され、楽曲の背景や制作秘話を知ることができます。

タイトルとアートワーク

アルバム・タイトルとジャケットのコンセプトはダルトリーによるものです。ジャケットには、それぞれ「R」「O」「C」「K」と書かれたフットボールのヘルメットを被ったメンバーが写っており、破られた写真を繋ぎ合わせたようなデザインが特徴的です。実際に穴が開いている箇所から、封入されたポスターが見えるという仕掛けが施されています。

このジャケット写真は、『四重人格』（1973年）発表後の全米ツアー中、1973年11月29日にシカゴ公演の会場の楽屋トイレで撮影されました。撮影者のグレアム・ヒューズによれば、『四重人格』ツアーを巡ってメンバー間の口論が絶えなかったため、撮影のためにメンバーを集めるだけでも大変だったそうです。タウンゼントが写真の出来上がりに不満を述べた際、ヒューズが破り捨てた写真をタウンゼントが気に入り、テープで貼り合わせたものがジャケットのアイデアになったとされています。

リイシュー

1998年にはリマスター／リミックス版がリリースされ、未発表曲や別テイクが多数追加収録されました。曲順も録音年月の順に並べ替えられています。2011年には、オリジナルのマスターテープから再リマスターされた日本限定版が発表され、曲順がオリジナルに戻され、'98年版の追加曲はオリジナル版の後に収録されました。2020年には、レコード・ストア・デイ向けにハーフ・スピード・カッティング・リマスター版が限定発売され、1998年版とは異なる追加曲が収録されています。

収録曲について

アルバムには、タウンゼントのソングライティングの才能が光る楽曲や、エントウィッスルやムーンによる個性的な楽曲が収録されています。「ピュア・アンド・イージー」や「ネイキッド・アイ」など、後のザ・フーの代表曲となる楽曲の原型も聴くことができます。また、エディ・コクランやボ・ディドリーといった往年のロックンロール・スターのカバーも収録されており、彼らのルーツを垣間見ることができます。

『オッズ&ソッズ』は、ザ・フーの音楽的な多様性と実験精神を示す貴重な作品であり、彼らの音楽をより深く理解するための格好のアルバムと言えるでしょう。

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