オットー4世 (神聖ローマ皇帝)

オットー4世：ヴェルフ家の皇帝、そしてその栄光と挫折

オットー4世（1175年 - 1218年）は、神聖ローマ帝国において特異な存在感を示した人物です。ヴェルフ家出身でありながらローマ王、そして神聖ローマ皇帝の座に就いた彼は、ホーエンシュタウフェン朝との激しい権力闘争、教皇との複雑な関係、そして最終的な敗北という、劇的な生涯を送りました。

幼少期と王位への道

ザクセン公ハインリヒ獅子公とイングランド王ヘンリー2世の娘マティルダを両親に持つオットー4世は、幼少期をイングランドで過ごしました。父ハインリヒがフリードリヒ1世によって国外追放されると、イングランドへ渡り、そこでリチャード1世の庇護を受けました。しかし、リチャード1世が捕らえられた際に人質となり、その後解放されてイングランドへ戻ります。

1197年、ハインリヒ6世の死後、シュタウフェン家のフィリップがローマ王の座を確保しようとすると、ヴェルフ家は対抗馬としてオットー4世を擁立しました。ケルン大司教アドルフなどの支援を得て1198年にローマ王に選出され、アーヘンで戴冠式が行われます。オットー4世の即位は、イングランドとフランスの対立をも引き起こす国際的な出来事でした。

教皇との複雑な関係とフィリップとの闘争

教皇インノケンティウス3世は、帝国の分裂と教皇権の強化を図り、オットー4世を支援しました。オットー4世はインノケンティウス3世の支持を得るため、教会の権利保障やシチリア王国に関する教皇の意向尊重などを約束しました。しかし、フィリップとの間では激しい闘争が続き、1206年には敗北を喫し、窮地に陥ります。

しかし、1208年にフィリップが暗殺されると、オットー4世は状況を一変させました。インノケンティウス3世の支援と、内戦に疲れた諸侯たちの支持を得て、皇帝選挙で勝利し、ローマ皇帝に即位しました。

ローマ皇帝としての栄光と破滅

1209年、オットー4世はローマで皇帝に戴冠しますが、その後の彼の行動は教皇との関係を悪化させます。彼は教皇との約束を反故にし、シチリア王国への介入、ローマへの進軍など、強硬姿勢を取ります。結果、1210年にはインノケンティウス3世から破門されてしまいます。

教皇の支持を失ったオットー4世は、新たなローマ王として推されたフリードリヒ2世との争いに巻き込まれます。1214年、ブーヴィーヌの戦いでフリードリヒ2世率いるフランス軍に敗北し、ローマ王位と皇帝位を失いました。

晩年と評価

敗北後、オットー4世はブラウンシュヴァイクに拠点を移し、静かに余生を過ごしました。1218年に赤痢で死去しました。

オットー4世は、強情で傲慢な人物として描かれる一方、優れた政治手腕と決断力も持ち合わせていたとされます。しかし、教皇との約束を破り、強硬な姿勢を貫いたことが、彼の破滅を招いたという見方もできます。彼の生涯は、中世ヨーロッパにおける権力闘争の激しさと、宗教と政治の複雑な関係を如実に示すものです。

家族

オットー4世はベアトリクスと結婚しましたが子供はいませんでした。その後マリアと再婚しましたが、やはり子供は生まれず、甥が後継者となりました。

参考文献

西川洋一「初期シュタウフェン朝」『ドイツ史 1 先史〜1648年』収録
フリードリヒ・フォン・ラウマー『騎士の時代　ドイツ中世の王家の興亡』
ジョルジュ・デュビー『ブーヴィーヌの戦い』
カール・ヨルダン『ザクセン大公ハインリヒ獅子公』
エルンスト・カントローヴィチ『皇帝フリードリヒ二世』
その他、多数の学術論文や書籍

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