オッパイをとったカレシ。—約束—

『オッパイをとったカレシ。―約束―』について

芹沢由紀子による漫画作品『オッパイをとったカレシ。―約束―』（オッパイをとったカレシ。―やくそく―）は、講談社の漫画雑誌『THEデザート』にて、2009年11月号および2010年1月号に掲載されました。単行本は、同社のKCデザートレーベルより全1巻が刊行されています。

作品のテーマと概要

本作の主題は、自身の性別に違和感を抱き、身体の性と自認する性が一致しない性同一性障害、特にFtM（Female to Male、出生時の身体は女性で性自認が男性である人）の主人公が経験する内面的な葛藤と、その周囲の人々との関わりです。主人公が自らのアイデンティティを模索し、社会や家族との関係性の中で揺れ動きながら生きる姿が描かれています。

シリーズ前作との関係

本作は、これに先立つ読切作品『オッパイをとったカレシ。』のシリーズ作品にあたります。前作は2000年に『デザート』の増刊に掲載されました。両作ともに性同一性障害というテーマを扱っていますが、登場人物は異なっており、『―約束―』では新たな主人公を通してテーマが掘り下げられています。

物語の始まり

物語は、主人公である成瀬レイコが、自身の生まれ持った身体的な性別に対して違和感を強く感じているところから始まります。この性別違和感が、彼女改め彼の人生における大きな課題となり、物語の核となる葛藤へと繋がっていきます。

主な登場人物

物語には、主人公を中心に様々な人物が登場し、彼の道のりに関わります。

成瀬治陽（なるせ ちあき） / 成瀬レイコ（なるせ レイコ）: 本作の主人公。FtM（Female to Male）。自身の性別に違和感を抱き、男性として生きることを模索します。物語は彼の視点から、内面の変化や苦悩、そして決意が描かれます。
石川あおい（いしかわ あおい） / 石川隼斗（いしかわ はやと）: MtF（Male to Female）。主人公とは異なるタイプのトランスジェンダーであり、その存在は主人公や読者に多様な視点を提供します。
淳子（じゅんこ）: 主人公の友人。
七菜（なな）: 主人公の友人。トラニチェイサー（トランスジェンダーのパートナーを意図的に求める人）を思わせる一面を持つ女性として描かれています。
成瀬美治（なるせ みはる）: 治陽の母親。息子の変化にどう向き合うか、家族の視点が描かれます。
成瀬陽一郎（なるせ よういちろう）: 治陽の父親。家族としての葛藤や理解の過程が描かれます。
裕樹（ゆうき）: FtMの当事者。主人公にとって、同じ経験を持つ者としての共感や示唆を与える存在です。
昇（しょう）: 裕樹と同様にFtMの当事者です。
青山（あおやま）
綾音（あやね）

これらの登場人物たちが、主人公のアイデンティティ探求の道のりにおいて、様々な形で関わり、物語に深みを与えています。

描かれる世界観

本作は、性同一性障害というセンシティブなテーマを扱いながらも、主人公が自分自身を受け入れ、社会との接点を探る姿を丁寧に追っています。家族や友人といった身近な人々の反応や理解、あるいは無理解も描かれ、当事者が直面しうる現実的な課題や心情が表現されています。自己肯定や他者との関係性、そして「自分らしさ」とは何かを問いかける作品と言えます。

書誌情報

シリーズ前作単行本
芹沢由紀子『オッパイをとったカレシ。』講談社〈KCデザート〉全1巻、2002年12月11日発売、ISBN 978-4-06-341196-6
本作単行本
芹沢由紀子『オッパイをとったカレシ。―約束―』講談社〈KCデザート〉全1巻、2010年1月13日発売、ISBN 978-4-06-365587-2

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