オニビシ (植物)

オニビシ：水に浮かぶ、トゲのある実

オニビシ（学名：Trapa natans var. japonica）は、ヒシ科に属する水生植物です。東アジア地域に広く分布しており、日本でも見ることができます。その名の通り、特徴的な姿から「鬼」を連想させる植物と言えるでしょう。

水面を覆う葉と、鋭いトゲを持つ果実

オニビシは一年草で、水面に浮かぶ葉を特徴とします。葉は菱形で、3～6cmの長さと4～9cmの幅を持ちます。茎の先端から放射状に葉を伸ばし、水面を覆うように生育します。

そして、オニビシの最大の特徴は、その果実です。堅い殻を持つ石果で、4本の鋭いトゲを持つ様子は、まさに「鬼」を思わせます。果実は45～70mmとヒシ科の中では大型で、胚乳にはでんぷんが豊富に含まれています。このでんぷんは、古くから食用として利用されてきました。染色体数は2n=48です。

ヒシやヒメビシとの違い

オニビシは、ヒシやヒメビシといった近縁種とよく似ています。葉の大きさには変異があるため、確実に種類を判別するには果実を観察する必要があります。

ヒシの果実のトゲは、萼片のうち2つが発達したもので、通常は2本です。一方、ヒメビシの果実は、上向きのトゲ2本と下向きのトゲ2本の計4本を持ちます。そしてオニビシの果実は、下向きのトゲが4本という特徴があります。特にオニビシの果実は、他の近縁種に比べて非常に大型になります。これらのトゲの数と向き、そして果実の大きさによって、オニビシを他のヒシ類と見分けることができます。

食用と、意外な用途

オニビシの果実の胚乳に含まれるでんぷんは、古くから食用とされてきました。栄養価が高く、飢饉の際の食料としても利用された歴史があります。

また、オニビシの果実は、かつては「撒菱（まきびし）」としても使用されました。鋭いトゲを持つ果実は、敵の足止めなどに利用されたと考えられています。

オニビシの生態と、その多様な利用

オニビシは、その独特の姿と、食用や撒菱としての歴史を持つ、興味深い水生植物です。水面を覆うその葉や、鋭いトゲを持つ大型の果実は、自然界における巧みな適応の証と言えるでしょう。これからも、その生態や歴史的利用について、さらに研究が進むことが期待されます。

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