オビ級病院船

オビ級病院船について

オビ級病院船（ロシア語：Госпитальные суда типа ≪Обь≫）は、ソビエト連邦及びロシアにおいて運用される病院船であり、混合型の医療支援艦艇としての役割を果たしています。具体的には320計画（オビ）、320A計画（エニセイ・スヴィリ）、B320計画（イルティシュ）という名称で呼ばれています。

開発の背景

第一次世界大戦からロシア内戦にわたる時期には、多くの病院船が活用されていましたが、ソ連海軍では長らく病院船が使用されていませんでした。しかし1970年代に入ると、ソ連海軍が外洋での活動を強化する中で、医療設備の必要性が増加しました。特に洋上での医療支援や、離島や僻地への対応が求められるようになり、新たな病院船の設計が開始されました。ポーランドの設計局であるプロレムが手掛けたオビ級は、1980年に「オビ」号が就役し、その後数隻が建造されることになりました。

船体の設計

オビ級病院船は、外観が客船に似た形状をしており、船首から船尾にかけて大きな船橋があるのが特徴です。船体は白色に塗装されており、赤い線や赤十字マークが施されています。これは、民間の病院船としての認識を高めるための工夫です。

船内の設計

この病院船は、艦隊随伴や島嶼への医療供給だけでなく、乗員の休息や人員輸送にも対応できるように設計されています。船内には、医療スタッフと同じ数の医療要員による治療室や手術室、病室が設けられており、最大で450人の患者を収容できる構造になっています。また、映画館や体育施設、プール、サウナも完備されており、医療以外にも余暇活動を楽しむ場所としての機能も持ち合わせています。

医療設備

医療装備としては、7室の手術室、診察室、病室、レントゲン室、薬局などがあり、患者に必要な医療を提供するための各種設備が整っています。患者の輸送には2基の梯子と電動クレーンが使用され、小型艇も備えているため、迅速な救助活動が可能です。

航空装備

船尾にはヘリコプターの甲板と格納庫が装備されており、Ka-25PS型のヘリコプターを搭載することができます。これにより、航空輸送を通じた医療支援も実施されています。

運用履歴

オビ級病院船は、ポーランドのシュチェチンで建造された後、ソ連の各艦隊に配備されました。これまでに、アブハジア戦争などの人道的ミッションや、自然災害への対応として医療支援を行ってきました。特に、時間が重要な医療支援が必要な状況下で、速やかに医療物資と人員を派遣する役割を担っています。

各艦の概要

• - オビ号（艦名由来：オビ川）：1980年に就役し、2007年に解体されました。
• - エニセイ号（艦名由来：エニセイ川）：1981年に就役し、現在は予備役であるとの情報があります。
• - スヴィリ号（艦名由来：スヴィリ川）：1990年代にはキューバやアンゴラでの医療支援も行った艦です。
• - イルティシュ号（艦名由来：イルティシュ川）：活動の中で多国籍軍への支援を行うなど、各地で幅広い活動をしています。

まとめ

オビ級病院船は、医療支援に特化した設計を持ち、様々な状況での対応能力を有していることから、今後も重要な役割を果たすと考えられています。特に最近では新型コロナウイルスの影響を受け、地域の医療機関と連携しながら活動を続けています。

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