オフィサー・アンド・スパイ

映画『オフィサー・アンド・スパイ』の概要

『オフィサー・アンド・スパイ』（原題：J'accuse）は、2019年に公開されたフランスとイタリア合作の歴史映画です。ロマン・ポランスキーが監督を務め、ジャン・デュジャルダンやルイ・ガレルが主なキャストとして出演しています。本作は、19世紀末のフランスで発生した冤罪事件、ドレフュス事件を題材に、ロバート・ハリスによる2013年の小説『An Officer and a Spy』を原作としています。

本作は、第76回ヴェネツィア国際映画祭のコンペティション部門において銀獅子賞と審査員大賞を受賞するなど、多くの評価を得ています。物語は、1895年のパリを舞台に展開し、国家反逆罪で不正に軍籍を剥奪されたユダヤ人の陸軍大尉アルフレッド・ドレフュスの運命を描いています。

ストーリーの概要

物語は、ドレフュスがドイツ大使館に対して機密情報を漏洩したという容疑をかけられるところから始まります。当時のフランスでは、ユダヤ人に対する激しい差別が広がっており、彼の主張は誰にも信じてもらえませんでした。彼は不当に、仏領ギアナにある孤島に幽閉されることになります。

一方、ジョルジュ・ピカール中佐は、敵に対する情報活動を担当する諜報部長に就任します。彼は、ドイツ大使館から回収した紙屑を分析することで、ドレフュスの冤罪を証明する証拠を見つけ出します。真実が明らかになっていく中、軍の上層部は体面を保つために、その事実を隠蔽しようとします。

ピカールは、抑圧に屈せず、ドレフュスの無実を世間に知らせるために行動に移りますが、結果として軍から左遷され、最終的には海外へ追いやられます。それでも彼は、作家エミール・ゾラなどと共にドレフュスの釈放運動を呼びかけ、世論を二分する大問題へと発展させます。1898年には、ドレフュスの再審が行われますが、政府の意向が反映された結果に終わります。

約10年後、ようやくドレフュスは無罪が保証され、再び軍に復帰します。彼はピカールを訪れ、官位昇進のお願いをしますが、現行法の問題からそれは難しいとされます。この出会いが両者の運命に与える影響は計り知れません。

キャストと評価

映画には、ジャン・デュジャルダンがピカール中佐役、ルイ・ガレルがドレフュス大尉役を演じるなど、豪華なキャストが集結しています。

映画の評価について、Rotten Tomatoesによると、33件の評論の中で76%が高評価を得ており、Metacriticでも56点というスコアがつけられています。また、フランスのメディアからは平均4点の評価を獲得しています。

論争と後々の影響

この作品は、監督ロマン・ポランスキーに関連する論争も呼び起こしました。彼が児童性的虐待の罪に問われている中で、セザール賞の最優秀監督賞を受賞した際、多くの女優や監督が抗議として会場を去る事態が発生しました。この出来事は、映画界における倫理観についての議論をさらに深めることになりました。

『オフィサー・アンド・スパイ』は、歴史の悲劇を描くことで、観る者に深い考察を促す作品です。ドレフュス事件を通じて、偏見や権力の暴走が引き起こす悲劇について考えさせられる内容となっています。

もう一度検索