オブジェクト指向モデリング

オブジェクト指向モデリング（OOM）は、システムやソフトウェアの設計において、オブジェクト指向の考え方を適用する手法です。特にコンピュータプログラムの設計においては、従来の分割統治法のようにコードの再利用や構造化だけでなく、「データとそれに関連する操作（メソッド）をまとめたオブジェクト」という概念を中心に据えることで、より柔軟で理解しやすいシステム構築を目指します。

オブジェクト指向モデリングの基本

オブジェクト指向の考え方には、アラン・ケイが提唱した「メッセージパッシング」に基づいたものと、クラスを基盤としたものがあります。どちらの場合も、単なるコードの集合体ではなく、データと操作を一体化したオブジェクトがシステムの基本単位となります。オブジェクトはそれぞれ固有の属性（データ）とメソッド（操作）を持ち、これらのオブジェクト同士が相互に作用し合うことでシステム全体が動作します。

モデリングのプロセス

オブジェクト指向モデリングでは、まず問題領域をオブジェクトの集合として捉えます。例えば、従業員管理システムを例に挙げると、「企業」「従業員」「雇用」などがオブジェクトとして識別されます。「従業員」オブジェクトは、氏名、生年月日などの属性を持ち、出勤やスキル向上といったメソッドを持つと考えられます。また、「雇用」は「従業員」と「企業」間の関連を表すオブジェクトとして表現できます。それぞれのオブジェクトが持つ属性やメソッドは、クラスという設計図によって定義されます。クラスはオブジェクトのテンプレートのようなもので、同じクラスに属するオブジェクトは共通の属性とメソッドを持ちます。

モデルの成長と標準化

オブジェクト指向モデルは、時間の経過とともに成長し、複雑化する傾向があります。そのため、モデルを記述するための標準化された記法が重要になります。かつては様々な記法が存在しましたが、現在は統一モデリング言語（UML）が広く普及しています。UMLは、オブジェクト指向モデルを視覚的に表現するための標準的な記法であり、システム設計者間のコミュニケーションを円滑にします。

実装への変換

オブジェクト指向モデルは、プログラマによってプログラミング言語のコードに変換されます。また、形式的な記述の場合は、CASEツールによって自動的に変換されることもあります。これにより、モデルの抽象的な概念が実際のソフトウェアとして実装されることになります。また、オブジェクト指向モデルは、データベースのスキーマ定義にも利用されるなど、幅広い分野で活用されています。

オブジェクト指向モデリングは、複雑なシステムをより理解しやすく、柔軟に設計するための強力な手法です。適切なモデルを設計することで、ソフトウェアの品質向上、開発効率の向上、そして保守性の向上に貢献します。

関連事項

• - デザインパターン: [オブジェクト指向]]設計における再利用可能な設計のパターン
• - [データモデリング: データを構造化し表現するための手法

もう一度検索