オプチカル・プリンター

オプチカル・プリンターとは

オプチカル・プリンターは、映画フィルムの編集において、現像済みのフィルムを別のフィルムに光学的に焼き付けるための装置です。この技術は、単なるフィルムのコピーだけでなく、特殊効果や映像の加工において重要な役割を果たしました。主に、映画撮影機に接続された小型の映写機で構成されており、映像の修正、古いフィルムの複製、そして様々な視覚効果を実現するために利用されました。

オプチカル・プリンターの機能と役割

オプチカル・プリンターが実現できる特殊効果には、画面が徐々に明るくなるフェードイン、逆に暗くなるフェードアウト、画面が別の画面に切り替わるディゾルブ（クロスフェード）、スローモーション、クイックモーション、そしてマット合成などがあります。これらの効果を組み合わせることで、複雑な映像表現が可能になり、1つのショットに複数の特殊効果を盛り込むこともできます。ただし、コスト面から、特殊効果を施す必要があるカットのみがオプチカル・プリンターにかけられることが一般的でした。このため、オプチカル合成を行ったカットとそうでないカットの間には画質の差が生じ、この差をいかに目立たなくするかが、当時の編集技術者の腕の見せ所でした。

歴史

最もシンプルなオプチカル・プリンターは1920年代初頭に開発されました。その後、1930年代にはリンウッド・ダンによって改良が加えられ、1980年代にはコンピューター制御を搭載したものが登場しました。しかし、1980年代後半からデジタル処理による特殊効果が普及し始め、1990年代半ばにはデジタル処理が主流となりました。現在では、オプチカル・プリンターは商業作品で使用されることはほとんどなく、フィルム撮影を行う一部の映像作家によって使用される程度となっています。1992年に公開された『永遠に美しく…』は、ILMがオプチカル・プリンターを使用した最後の作品とされています。

円谷プロダクションとオプチカル・プリンター

1937年に東宝の特殊技術課に迎えられた円谷英二は、国産の手動式オプチカル・プリンターを自ら設計し、合成技術の向上を目指しました。その後、『ゴジラ』の制作を機に、円谷は更なる技術向上を目指し、1963年にはアメリカのオックスベリー社製のスリーヘッド方式オプチカル・プリンターを導入しました。さらに、円谷はフォーヘッド方式のオプチカル・プリンターを導入しようとしましたが、高額な費用がネックとなりました。最終的には、TBSがこの機材を購入し、円谷プロダクションがTBSのために特撮番組を制作するという契約が結ばれ、その結果、『ウルトラQ』が制作されることになりました。このプリンターは、後のウルトラシリーズでも活躍しました。

エリアルイメージ合成機

オックスベリー社製のオプチカル・プリンターが導入される以前や、その後も、エリアルイメージ合成機と呼ばれる別の種類のオプチカル・プリンターが映像業界で利用されていました。この合成機は、マスク作成からデュープ処理までを迅速に行うことができ、特にテレビシリーズなどの短納期が求められる現場で重宝されました。例えば、『バンパイヤ』では実写映像とセルアニメーションの合成にこの機材が活用されました。また、松竹の川上景司や、東映に移籍した矢島信男などもエリアルイメージ合成機を利用し、数々の作品で特殊効果を実現しました。その後、東映はオックスベリー社製のオプチカル・プリンターを導入しましたが、矢島が使用していたエリアルイメージ合成機は、独立した合成技師である山田孝に譲渡され、16ミリ用に改造されました。そして、山田は「チャンネル16」を設立し、16ミリ合成に特化した会社として活躍しました。チャンネル16では、16ミリフィルムの特性上、若干の画面の揺れが生じるという問題がありましたが、技術の向上により改善され、35ミリフィルムに匹敵するクオリティでの合成が可能となりました。これにより、ロケ地への機材運搬の負担が軽減され、特殊効果を多用した撮影が容易になりました。その結果、予算超過などの問題も発生しましたが、数々の特撮作品に貢献しました。

デジタルへの移行とその後

2000年代に入ると、デジタル合成技術が主流となり、オプチカル・プリンターやエリアルイメージ合成機の出番は減少しました。しかし、「チャンネル16」はデジタル合成が主流になった後も、一時的に16ミリ仕様のエリアルイメージ合成機を使用し続けました。そして、2001年にデジタル合成専門の体制へと移行しました。

まとめ

オプチカル・プリンターは、映画の特殊効果技術において重要な役割を果たした装置でした。その歴史は、映画技術の発展とともに進化し、映像表現の可能性を広げました。デジタル合成が主流となった現代では、その姿を見ることは少なくなりましたが、かつての名作を支えた重要な技術として、その歴史は語り継がれていくでしょう。

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