川上景司

川上景司：特撮黎明期を支えた巨匠

川上景司（かわかみ けいじ）は、1912年2月に東京で生まれ、1973年6月2日に61歳で生涯を閉じた、日本の撮影技師であり、特撮監督です。彼は、日本映画の特撮技術の発展に大きく貢献し、数々の名作を手がけました。

生い立ちと東宝入社

川上は東京府立工芸学校を卒業後、文部省に入省し、社会教育映画課で映画カメラマンとしてのキャリアをスタートさせました。1939年、東宝に入社し、円谷英二が率いる特殊技術課に配属されます。同期には、後のクリエイター、うしおそうじがいました。東宝では、『燃ゆる大空』などの作品に参加し、特撮技術の基礎を学びました。

戦時下の特撮

第二次世界大戦中、川上は特殊技術課で合成作画係として、戦意高揚映画の特撮に携わりました。ミニチュア特撮の需要が高まる中、『上海の月』や『八十八年目の太陽』などの作品で、その才能を発揮。1942年には特撮カメラマンに転身し、円谷英二の指導のもと、ミニチュア撮影、光学合成など、特撮の技法を習得しました。この時期には、『南海の花束』や『ハワイ・マレー沖海戦』といった作品を担当しました。

松竹への移籍と特撮部門の設立

1943年、川上は松竹蒲田撮影所に移籍し、特殊撮影を担当。松竹では特殊撮影課が新設され、『愛機南へ飛ぶ』などの作品を手がけました。戦後は、松竹大船撮影所特撮課主任に復帰し、日本初の総天然色映画『カルメン故郷に帰る』にも携わりました。また、公職追放期間中の円谷英二が設立した「円谷特技研究所」と連携し、松竹作品の特殊撮影を請け負いました。

円谷特技プロダクションへの参加と独立

1963年、川上は円谷英二が設立した円谷特技プロダクションに参加し、『太平洋ひとりぼっち』の特撮を担当。また、『海底軍艦』では、東宝からの依頼で特撮B班監督を務めました。テレビ特撮『ウルトラQ』では特技監督として11本に参加しましたが、制作上の意見の相違から円谷特技プロを退社。

1966年には、渡辺明らとともに日本特撮映画株式会社を設立し、独立プロダクションとして映画などの特撮部分を請け負いました。松竹の『宇宙大怪獣ギララ』の特撮監修を担当するなど、怪獣ブームの一翼を担いました。

その後

1969年に日本特撮映画株式会社を解散後、1973年に癌で亡くなりました。川上景司は、黎明期の日本特撮映画界において、その技術と才能で数々の作品を支え、後進の育成にも尽力した、偉大な人物として記憶されています。

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