オモダカ属

オモダカ属（Sagittaria）について

オモダカ属は、オモダカ科に属する植物のグループで、主に湿地や水田といった水辺に生育する抽水植物です。これらの植物は、水田雑草として扱われることもありますが、一方で、その独特な形状から観賞用として栽培されたり、食用として利用されたりもします。

特徴

オモダカ属の植物の多くは、矢尻のような形をした葉を持っていることが特徴です。しかし、生育環境や成長段階によって葉の形は大きく変化し、生育初期には細長い線形だったものが、成長するにつれて披針形、卵円形、心形、そして特徴的な鏃形や鉾形へと変化します。また、多くは多年生の抽水植物ですが、浮葉性や沈水性のものも見られます。地下茎からランナーを伸ばして繁殖し、その先に新たなシュートを形成します。

花は雌雄同株でありながら、雄花と雌花が別々に咲く単性花です。多くの場合、直立する花茎の上部に雄花、下部に雌花が咲きます。

種

世界には約30種のオモダカ属の植物が生育しており、日本には以下の4種（変種を除く）が自生しています。

アギナシ (Sagittaria aginashi)： 日本固有種。
ウリカワ (Sagittaria pygmaea)： 全国に分布し、水田で見られる沈水～抽水～湿生植物です。ランナーによる繁殖力が旺盛です。
オモダカ (Sagittaria trifolia)： 全国各地の水田に生育する抽水植物で、家紋のモチーフとしても知られています。クワイの原種です。
カラフトグワイ (Sagittaria natans)： 北海道やユーラシアの亜寒帯に生育する浮葉植物で、絶滅危惧IA類に指定されています。

この他にも、栽培種として以下のものがあります。

クワイ (Sagittaria trifolia var. edulis)： オモダカの栽培変種で、塊茎が食用とされます。
セイヨウオモダカ (Sagittaria saggitifolia)： ヨーロッパ原産。
タイリンオモダカ (Sagittaria montevidensis)： 南米原産。
ナガバオモダカ (Sagittaria graminea)： 北米原産。
ヒメオモダカ (Sagittaria subulata)： 北米原産。
サジタリア (Sagittaria subulata var. subulata)
* ピグミーチェーン・サジタリア (Sagittaria subulata var. pusilla)


これらのうち、日本に自生する種は、いずれも塊茎などで旺盛に繁殖するため、水田では難防除雑草として知られています。しかし、カラフトグワイのように絶滅危惧種に指定されている種もあり、保全の必要性も指摘されています。

食用としての利用

オモダカ属の植物は、世界各地で食用として利用されてきました。特に、塊茎はデンプン質を豊富に含み、重要な食料源となっています。ポーランドの旧石器時代の遺跡からは、セイヨウオモダカが食用とされていた痕跡が見つかっています。また、北米原産のSagittaria latifoliaは、WapatoまたはDuck potatoと呼ばれ、ネイティブアメリカンにとって必須の食料源の一つでした。根茎の外観はクワイによく似ています。

このように、オモダカ属の植物は、水田雑草としての一面を持ちながらも、観賞用や食用として人々の生活に深く関わってきた植物であると言えるでしょう。

もう一度検索