オランダ (アルバム)

ビーチ・ボーイズ、苦難の末に完成させた意欲作『オランダ』

1973年にリリースされたザ・ビーチ・ボーイズのアルバム『オランダ』は、創造的な行き詰まりとメンバー間の緊張という困難な状況下で制作されました。本作は、バンドが1972年の夏にオランダに滞在し、改造されたスタジオでレコーディングを行ったという異例の経緯を持っています。しかし、リリース直前にはロサンゼルスで急遽2曲が録音され、アルバムに追加されました。

オランダでのレコーディングという試み

『カール・アンド・ザ・パッションズ - ソー・タフ』のリリース後、バンドのマネージャーであったジャック・ライリーは、レコーディング場所を変えることで気分転換になり、新たなインスピレーションが生まれるのではないかと考え、次作をオランダで制作することを提案しました。メンバーは、ブライアン・ウィルソンの鬱病にも良い影響があるのではないかと期待し、この提案に同意しました。

しかし、1972年の中頃までにブライアンの精神状態は悪化し、薬物依存も深刻化していました。彼は以前に比べて曲作りへの意欲を失い、メンバーは彼の創造力が回復することを切望していました。ブライアン自身はオランダ行きを嫌がり、飛行機への搭乗を2度もキャンセルしましたが、3度目にしてようやくオランダへ向かいました。しかし、オランダでもブライアンは薬物浸りの日々を送り、アルバムのレコーディングはカール・ウィルソンをはじめとする他のメンバーが中心となって行われました。

特異なボーナスEP

本作の最も特徴的な点は、ボーナスとして追加されたEPです。ブライアンが制作したおとぎ話『ヴァーノン山と小道』は、彼自身は自信作としていましたが、メンバーからの評価は芳しくありませんでした。しかし、カールはブライアンのために、この作品をEPとしてアルバムの付録にすることを決定しました。EPの大半はライリーによるナレーションで構成されています。

収録曲

1. セイル・オン・セイラー - Sail On, Sailor
2. スティームボート - Steamboat
3. カリフォルニア・サーガ／ビッグ・サー - California Saga: Big Sur
4. カリフォルニア・サーガ／ザ・ビークス・オブ・イーグルス - California Saga: The Beaks Of Eagles
5. カリフォルニア・サーガ／カリフォルニア - California Saga: California
6. ザ・トレイダー - The Trader
7. リーヴィング・ディス・タウン - Leaving This Town
8. オンリー・ウィズ・ユー - Only With You
9. ファンキー・プリティー - Funky Pretty
10. ヴァーノン山と小道 - Mount Vernon and Fairway (A Fairy Tale)
ヴァーノン山と小道（テーマ） - Mount Vernon And Fairway (Theme)
魔法の笛吹き（インストゥルメンタル） - I'm The Pied Piper (Instrumental)
早く帰ろう - Better Get Back In Bed
不思議なトランジスタ・ラジオ - Magic Transistor Radio
魔法の笛吹き - I'm The Pied Piper
ラジオ王国 - Radio King Dom

『オランダ』は、ビーチ・ボーイズのキャリアの中でも異色作として知られていますが、バンドの創造性と苦悩が色濃く反映された作品として、今もなお多くのファンに愛されています。

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