オルゴールの小さな博物館

オルゴールの小さな博物館：日本のオルゴール文化を牽引した30年の軌跡

東京都文京区に位置していた「オルゴールの小さな博物館」は、オルゴールコレクターであり研究家でもあった名村義人氏によって1983年5月15日に開館しました。日本で最初のオルゴール専門の博物館として、30年間にわたり、多くの人々にオルゴールの魅力を伝え続けました。

名村義人氏と300点以上のオルゴールコレクション

名村義人氏の情熱と収集によって集められたオルゴールコレクションは、18世紀末から20世紀にかけて製造された、シリンダーオルゴール、ディスクオルゴール、オートマタ、自動ピアノ、ストリートオルガンなど300台以上にも及びました。その中には、スイス・ペイラード社製のプレロディニーク、ドイツ・シンフォニオン社製のシンフォニオン、フランス・ランベール工房製のオートマタ「トルコの煙草のみ」、アメリカ・エオリアン社製のスタインウェイ・デュオ・アートといった、希少で歴史的に貴重な品々も含まれていました。これらのオルゴールは、単なる機械装置ではなく、芸術作品として高い評価を得ていました。

多彩な展示とイベント

博物館では、所蔵オルゴールの演奏を聴きながら館内を巡る複数の見学コースが用意されていました。「博物館コース」では、常設展示と企画展を鑑賞し、スタッフによる解説付きでオルゴールの音色を楽しむことができました。「演奏会コース」では、音楽ホールで本格的な演奏会が開催され、オルゴールの歴史や仕組みについても学ぶことができました。さらに、館長である名村義人氏自ら解説を行う「館長コース」も用意されており、マニア向けの深い解説に惹かれた多くの来場者が訪れました。クリスマスコンサートなどの企画展も定期的に開催され、来館者はオルゴールの魅力を多角的に楽しむことができました。

分館の開設と閉館

1998年には、東京お台場と箱根に分館を開設し、オルゴールの普及に努めました。しかし、全国的にオルゴール博物館が増加する状況の中、開館30周年を機に、2013年5月15日に惜しまれつつ閉館となりました。閉館後も、公式ウェブサイトやYouTubeチャンネルを通じて、館内の様子やオルゴールの音色を楽しむことができます。

オルゴールの小さな博物館の足跡

オルゴールの小さな博物館は、単なる博物館にとどまらず、オルゴール文化の発展に大きく貢献しました。名村義人氏の著書『オルゴールの詩』『オルゴールは夢仕掛』『アンティーク・オルゴール物語』や、オルゴールの音声を収録したカセットテープやCD、CD-ROMなども制作・販売され、オルゴールの魅力を広く伝える活動を行いました。また、館内には「オルゴール・ホール　ピアノフォルテ」を併設し、演奏会やワークショップなどを通して、多くの人々がオルゴールと触れ合う機会を提供していました。

建物の概要

閉館当時の博物館は、7階建てのビルで、床面積は780平方メートルでした。17人乗りのエレベーターや障害者用トイレも備えられており、バリアフリーにも配慮された設計でした。各階には、音楽ホール、ミュージアムショップ、修理工房、収蔵庫、事務室、カフェ、アンティークショップ、常設展示室、企画展示室、特別展示室など、様々な機能が配置されていました。

閉館後も続くオルゴールの響き

オルゴールの小さな博物館は閉館しましたが、その活動は、デジタルアーカイブを通して現在も継続されています。公式ウェブサイトでは、館内の写真やコレクションの情報を見ることができ、公式YouTubeチャンネルでは、貴重なオルゴールの音色を聴くことができます。オルゴールの小さな博物館は、日本のオルゴール文化に大きな足跡を残した、重要な存在でした。

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