オルティガーラ山の戦い

オルティガーラ山の戦い：第一次世界大戦における山岳戦の激闘

オルティガーラ山の戦いは、1917年6月10日から25日にかけて、第一次世界大戦中のイタリア戦線、アジアーゴ高原に位置するオルティガーラ山で繰り広げられたイタリア王国とオーストリア＝ハンガリー帝国との間の戦闘です。前年のアジアーゴの戦いで一時的に後退したオーストリア＝ハンガリー軍が、依然として国境付近の拠点を保持していたため、イタリア軍はこれらを奪還し、自軍の防衛線を強化する必要に迫られていました。

戦闘の背景

イタリア軍は、オーストリア＝ハンガリー軍が保持する拠点が、今後の反撃の際に不利になる要素となることを懸念していました。特にオルティガーラ山は戦略的に重要な拠点であり、イタリア軍はこれを奪還することで、敵の攻撃を牽制し、自軍の防御を固めることを目指しました。この戦いでは、イタリア軍は兵力30万人、砲兵1600門という圧倒的な戦力を、2、3kmの狭い範囲に集中投入しました。しかし、この過剰な兵力集中は、かえってイタリア軍の行軍を困難にするという誤算もありました。一方、オーストリア＝ハンガリー軍は、有利な地形に陣地を構築し、砲兵部隊も効果的に配置していました。また、イタリア軍の攻撃を事前に察知していたため、奇襲の効果も薄れていました。

戦闘の経過

6月10日、戦いは開始され、両軍は激しい戦闘を繰り広げました。特に激戦となったのは、オルティガーラ山頂の奪い合いでした。イタリア軍の第52アルピーニ師団は、装備ではオーストリア＝ハンガリー軍の山岳部隊に劣っていたものの、高い士気を維持し、果敢に攻撃を続けました。その結果、彼らは山頂を占領し、オーストリア＝ハンガリー軍兵士1000名を捕虜にし、17丁の機関銃を鹵獲することに成功しました。その後、増援部隊の到着により、オルティガーラ山全域がイタリア軍の支配下となりました。

しかし、オーストリア＝ハンガリー軍も直ちに反撃を開始し、多数の増援部隊を投入しました。第52アルピーニ師団は、奪還された陣地を守るために奮戦し、白兵戦も多発しました。戦闘中には、オーストリア＝ハンガリー軍が毒ガスを使用した記録も残っていますが、これはイタリア戦線における2度目の使用であり、両軍ともに山岳戦での毒ガス使用は一般的ではありませんでした。オーストリア＝ハンガリー軍は一時は4つの陣地全てを奪還しましたが、イタリア軍も反撃を加え、2つの陣地を再度奪還しました。6月25日、両軍の戦闘は終結しました。

戦いの結果と影響

この戦いは、オーストリア軍のチロル方面からの攻撃の可能性を低減させるという点で、イタリア軍にとって一定の成果を上げました。しかし、1917年6月29日に第52アルピーニ師団が占領地から撤退する際、部隊の半数近くの兵士が犠牲になっていました。この戦いは後年、「アルピーニのカルヴァリ」と呼ばれるようになり、多くの戦死者がいまだに眠る場所となっています。戦後、イタリア軍はオーストリアの捕虜を伴い大規模な捜索を行いましたが、今でも戦死者の遺体が発見されることがあるといいます。

また、イタリア陸軍司令部は、この作戦の責任を第6軍の司令官エットーレ・マンブレッティに負わせ、彼を解任しました。この戦いは、イタリア軍にとって多くの教訓を残し、その後の戦略にも影響を与えることとなりました。

オルティガーラ山の戦いは、第一次世界大戦における山岳戦の過酷さを示すとともに、両軍の兵士たちが示した勇気と犠牲を今に伝えるものとなっています。

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