オルティロコス

ギリシア神話のオルティロコス

「オルティロコス」（古希: Ὀρτίλοχος）は、古代ギリシアの神話に登場する人物に与えられた名前です。しばしば「オルシロコス」（古希: Ὀρσίλοχος）とも表記されることがあります。この名前を持つ人物は複数存在しますが、特に著名なのは以下の二人です。

1. エーリス地方の河神アルペイオスの子
2. メッセニア地方パライの王ディオクレースの子

これらの人物は、それぞれギリシア神話の異なる物語や系譜の中で重要な役割を果たしています。特に、上記の二人は祖父と孫の関係にあります。

河神アルペイオスの子オルティロコス

この人物は、エーリス地方を流れる河を神格化した存在であるアルペイオスと、女性テーレゴネーとの間に生まれました。母テーレゴネーの家系は、古代アルゴス王国の伝説的な王ダナオスにまで遡る由緒正しいものです。ダナオスの娘の一人、ピューロダメイアは、神々の伝令使ヘルメースとの間にパリスという子をもうけました。このパリスは、後にメッセニア地方に都市パライを建設した人物とされています。パリスは娘テーレゴネーをもうけ、テーレゴネーが河神アルペイオスとの間に生んだのが、このオルティロコスです。

アルペイオスの子オルティロコスは、後にディオクレースの父となりました。このディオクレースは、トロイア戦争にメッセニア勢を率いて参加する人物となります。

また、このオルティロコスは、ホメロスによる叙事詩『オデュッセイア』に登場する場面に関連して言及されています。主人公オデュッセウスが、友人であるエウリュトスの子イーピトスから弓を贈られたエピソードは有名ですが、この二人が出会い、弓が贈られた場所が、このオルティロコスの館であったと伝えられています。これは、オルティロコスの地位や豊かさを示すものと考えられます。

ディオクレースの子オルティロコス

こちらは、パライの王ディオクレースの子として生まれた人物です。彼の祖父は、先述の河神アルペイオスの子オルティロコスにあたります。つまり、この二人のオルティロコスは祖父と孫の関係です。

ディオクレースの子オルティロコスには、クレートーンという双子の兄弟がいました。また、アンティクレイアという妹もいたとされています。

彼と兄弟のクレートーンは、ギリシア軍のトロイア遠征に参加しました。彼らは、老練な将軍ネストールが率いるメッセニア地方からの部隊の一員として、ギリシア連合軍に加わりました。しかし、トロイア戦争における激しい戦闘の中で、オルティロコスとクレートーンの兄弟は、トロイア軍の有力な将軍であるアイネイアースによって討ち取られてしまいます。この最期は、ホメロスの叙事詩『イリアス』の中で語られています。

まとめ

「オルティロコス」という名前は、ギリシア神話において、特にエーリスとメッセニアの系譜、そしてオデュッセウスの物語やトロイア戦争といった主要なエピソードに関連する二人の人物を指す際に用いられます。一人は河神アルペイオスの子としてパライの王ディオクレースの父となった人物、もう一人はその息子ディオクレースの子としてトロイア戦争で命を落とした人物です。それぞれ異なる文脈で語られる存在ですが、両者が祖父と孫という血縁で結ばれている点は特筆されます。

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