オルトフェニルフェノール

オルトフェニルフェノール(OPP)：その用途、歴史、そして安全性

オルトフェニルフェノール(OPP)は、強力な殺菌・防カビ作用を持つ化学物質です。化学式はC₁₂H₁₀Oで、別名2-フェニルフェノールとも呼ばれます。主に柑橘類の防腐剤として利用され、収穫後の腐敗を防ぐポストハーベスト農薬として、ビフェニルやチアベンダゾールと共に用いられてきました。

日本におけるOPPの利用と規制

日本では、1955年に農薬として登録されましたが、1969年には登録が失効しています。その後、食品添加物としての利用が検討され、1977年に柑橘類の防カビ剤として認可されました。現在も、木や竹製の割り箸、巻き簀などにも防カビ剤として使用されているケースが見られます。

しかし、この認可に至る過程は、日米間の貿易摩擦を背景とした複雑なものでした。1974年、厚生省（現厚生労働省）は、当時未認可だったOPPとチアベンダゾールが使用されている柑橘類の輸入を警告しました。翌1975年には、保税倉庫に保管されていたアメリカ産グレープフルーツからOPPが検出され、日本政府は一部を廃棄処分としました。

この出来事を巡っては、アメリカのマスコミが「日本が太平洋をトム・コリンズにした」と大きく報じ、アメリカ政府や輸入業者からOPPの使用を認めるよう強い圧力が日本政府にかかりました。国内消費者からの反対もあったものの、1977年、厚生労働省はOPPを食品添加物として認可しました。この出来事は「日米レモン戦争」と呼ばれ、日本の食品安全規制と国際貿易の関係性を示す象徴的な出来事となりました。

OPPの毒性と安全性

OPPは、人体への影響も懸念される物質です。厚生労働省は、1日の摂取許容量を体重1kgあたり1mgと定めています。食品添加物として柑橘類に用いられる際は、10ppmまでが許可されています。

現在、OPPの使用に関しては、その安全性について継続的な議論と監視が行われています。新たな知見や技術の進歩に伴い、規制内容の見直しや代替物質の開発なども検討されていると考えられます。

まとめ

オルトフェニルフェノール(OPP)は、その強力な殺菌・防カビ作用から、長年にわたって柑橘類の保存に貢献してきました。しかし、その認可過程や毒性に関する懸念から、安全性の確保と国際的な協調の重要性が改めて認識されるようになりました。食品添加物としての利用、そしてその安全性に関する情報は、今後も継続的に見直され、より安全な社会を目指した取り組みが求められています。今後の研究や規制の動向に注目が必要です。

参考文献

農薬毒性の事典（改訂版）2002年三省堂 ISBN 9784385356044

外部リンク

オルトフェニルフェノール - 横浜市衛生研究所

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