オレゴン (戦艦)

USSオレゴン：激動の時代を航海した戦艦

USSオレゴン(BB-3/IX-22)は、アメリカ海軍のインディアナ級戦艦の3番艦として、その名を歴史に刻みました。オレゴン州にちなんで命名されたこの艦は、米西戦争での英雄的な活躍から、博物館船としての静かな時を経て、最終的には解体されるという、波乱に満ちた生涯を送りました。

起工から米西戦争での活躍

1891年にカリフォルニア州サンフランシスコで起工されたオレゴンは、1896年に就役。当初は太平洋での任務に就いていました。しかし、1898年にメイン号の爆沈事件をきっかけに、スペインとの緊張が高まります。この時、オレゴンは歴史に残る長距離航海を敢行。サンフランシスコから南米を経て東海岸まで、14,000マイル以上を66日間で駆け抜けました。マゼラン海峡通過時の強風や、給炭作業などの困難を乗り越え、この記録的な航海は、人々に大きな衝撃を与えました。

この航海が示したことは、巨大な戦艦の能力だけでなく、パナマ運河の必要性でした。もしパナマ運河があれば、航海時間は大幅に短縮できたはずです。このことが、パナマ運河建設への反対意見を押し流すことになり、アメリカが運河建設を引き継ぐ大きな要因の一つとなりました。

米西戦争では、オレゴンはサンチャゴ・デ・クーバ海戦で重要な役割を果たしました。その活躍から「マッキンレーのブルドッグ」という愛称で呼ばれるほどでした。

その後の軍役と博物館船時代

米西戦争後、オレゴンは一時的に予備役となり、近代化改装を受けました。その後、1911年に再就役し、西海岸を巡航。第一次世界大戦にも部分的に参加しました。ロシア内戦への介入では、陸上兵力を輸送する船団を護衛する役割を担いました。

1919年に退役した後、オレゴンは博物館船として保存されることになります。1925年にはオレゴン州に貸与され、ポートランドに係留されました。しかし、1941年に太平洋戦争が勃発すると、その運命は再び大きく変わります。太平洋戦争の激化により資源不足となったアメリカ海軍は、1942年にオレゴンを解体することを決定。しかし、解体途中でグアム奪還作戦の際に、ハルクとして利用されることになりました。上部構造を撤去し、内部の機器を取り除いた後、オレゴンはグアム攻略部隊を支援するために、弾薬を積んで曳航されました。

解体、そして遺産

終戦後、オレゴンはグアムで係留されていましたが、1948年には台風によって漂流。その後、再びグアムに戻されましたが、1956年に解体されることになりました。しかし、オレゴンの遺産は完全に失われたわけではありません。マストはポートランドのトム・マッコール・ウォーターフロントパークに移設され、スクリューはオレゴン歴史協会に所蔵されています。また、煙突の一部も残存しており、その一部は横須賀基地にも保存されています。

USSオレゴンは、その誕生から解体まで、アメリカの歴史を象徴するような、激動の時代を航海し続けた戦艦でした。その功績と歴史は、今もなお、多くの人々に語り継がれています。

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