オレゴン時間

オレゴン時間（オレゴンじかん）

アメリカ合衆国北西部に位置するオレゴン州では、その広大な州域において複数の標準時が採用されており、時間帯に関する独特の状況が見られます。州の大部分では太平洋標準時（Pacific Standard Time, PST）が公式な時間帯として用いられています。しかし、州の極東部においては、地理的な位置や経済的な結びつきから、異なる時間帯が選択されています。

オレゴン州で使用される主な時間帯は、太平洋標準時と山岳部標準時（Mountain Standard Time, MST）の二つです。州の中央部から西部にかけての広範囲は太平洋時間帯に属しており、州都セーラムや最大都市ポートランドを含む多くの主要都市がこの時間に従っています。

一方、州の最東端に位置するマルヒュア郡（Malheur County）では、その大部分が山岳部標準時を採用しています。これは、同郡がアイダホ州の州都ボイシと経済的、社会的に密接な関係にあるためです。マルヒュア郡内で山岳部時間が適用される地域には、郡最大のコミュニティであるオンタリオ市や郡庁所在地のヴェイルなどが含まれます。この地域における太平洋時間帯との境界線は、技術的には複雑なラインで定義されています。具体的には、公有地測量システムに基づいたタウンシップ35南、レンジ37東の南西隅（おおよそ北緯42.45度付近）を起点として東の州境へ向かい、そこからオレゴン州とアイダホ州の州境に沿って南下し、ネバダ州との州境に至る線となっています。このように、同じオレゴン州内でも、東部の一部地域は地理的な結びつきを重視して隣州と同じ時間帯を採用しているのです。

また、ハーニー郡（Harney County）内のドリュージー（Drewsey）という集落では、マルヒュア郡に近いことから、一部の住民が非公式に山岳部時間に準拠した生活を送っているケースも見られます。しかし、地元の企業や公的な場においては、州全体に適用される公式な太平洋時間が遵守されているのが実情です。

近年の時間帯に関する議論として、将来的な変更の可能性が浮上しています。2019年、オレゴン州議会上院は一つの法案を可決しました。この法案は、マルヒュア郡を除くオレゴン州全域において、年間を通じて夏時間（デイライトセービングタイム）を適用することを提案するものです。夏時間は通常、標準時より1時間進んだ時間となるため、この法案が成立し施行されれば、州の主要部分は事実上、山岳部標準時と同じタイムオフセット（協定世界時UTCから-7時間）で一年を過ごすことになります。これは、従来の太平洋標準時（UTC-8時間）および太平洋夏時間（UTC-7時間）の運用を改め、通年でUTC-7時間とするものです。

この上院で可決された法案は、州議会の下院ではまだ審議が完了していません。そのため、その後の展開は未定であり、実際にこの計画が実現するかどうかは不確かです。さらに、アメリカ合衆国の連邦法では、州が標準時や夏時間の運用方法を変更する際には、連邦議会の承認が必要と定められています。したがって、たとえオレゴン州議会の両院を通過したとしても、連邦レベルでの承認が不可欠となります。このような通年夏時間化の動きは、オレゴン州だけでなく、近隣のワシントン州やカリフォルニア州でも同様の法案や提案が議論されています。これらの州もまた、連邦議会の承認を待っている状況です。

このように、オレゴン州の時間帯は、州内の地域によって異なり、また将来的な変更の可能性も抱えています。国際的な時間帯情報のデータベースであるIANAのtz databaseにおいても、オレゴン州の標準時は適切に管理され、反映されています。

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