オレフォス・グラスブリュック

オレフォス・グラスブリュック：スウェーデンが生んだガラス工芸の傑作

スモーランド地方の静かな村、オレフォス。そこに1898年、オレフォス・グラスブリュック（Orrefors Glasbruk）は誕生しました。当初は、窓ガラスやジャム瓶といった実用的なガラス製品が中心でしたが、1913年の経営体制変更を機に、その歩みは大きく変わります。

1916年頃より、芸術性の高いガラス製品の製作に力を入れるようになったオレフォス。ガラス装飾とデザインを担うため、サイモン・ゲイトとエドヴァルド・ハルドという、二人のスウェーデン人画家が招聘されました。彼らはガラス制作の経験はありませんでしたが、持ち前の芸術的才能で、オレフォスのガラスに新たな息吹を吹き込みます。

その後、ヴィッケ・リンドストランドやエドヴィン・エーストロムといった、個性豊かな芸術家たちが加わり、オレフォスのガラス製品はますます多様化していきます。それぞれの芸術家は独自のスタイルを持ちながらも、共同作業を通じて、独特の美意識と革新的な技法を確立していきました。

その代表例が、グラール（Graal）グラスです。色鮮やかな浮彫り装飾が、透明で滑らかなクリスタルの層に包まれた、繊細で美しい作品は、見る者を魅了します。

1936年には、画期的な技法「エアリアル（Ariel）」が開発されました。これは、ガラスの壁の中に空気を閉じ込める技法で、シェイクスピアの戯曲『テンペスト』から名付けられたと言われています。

オレフォスのガラス製品は、フランスの巨匠エミール・ガレのアール・ヌーヴォー作品にも大きな影響を与えました。凍りついた水を思わせる、透明感のあるクリスタルと、鮮やかな色彩の調和は、独特の輝きを放ちます。その高い芸術性は、1925年のパリ万国博覧会で世界中の人々を虜にし、絶賛されました。

第一次世界大戦と第二次世界大戦の間、オレフォス・グラスブリュックは、ガラス業界をリードする存在として、その地位を確固たるものにしていきます。近年では、豪華なシャンデリアの制作でも知られるようになりましたが、現在もなお、創業以来受け継がれてきた伝統的なデザインの製品が、丁寧に作られています。

オレフォス・グラスブリュックのガラス製品は、単なる日用品ではありません。それは、スウェーデンの豊かな自然と、芸術家たちの情熱が凝縮された、まさに芸術作品と言えるでしょう。それぞれの作品に込められた、歴史と伝統、そして未来への希望を感じることができる、それがオレフォスのガラスの魅力なのです。

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