オレンジの種五つ

オレンジの種五つ

「オレンジの種五つ」（原題："The Five Orange Pips"）は、イギリスの著名な作家アーサー・コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの短編小説です。本作は、1891年11月に『ストランド・マガジン』に初めて掲載され、その後1892年に発行された短編集『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されています。この作品は全56篇の短編の中でも5番目に発表されたものです。

あらすじと背景

物語は一つの暴風雨の夜から始まります。ジョン・オープンショーという青年がホームズの元を訪れ、彼の伯父や父が不審な死を遂げたことを語ります。その死の前に、二人には共に「オレンジの種が五つ入った封筒」がK.K.Kという悪名高い団体から送られてきていました。警察は事故と判断しましたが、オープンショーは自らの家族が殺害されたと確信しており、ホームズに助けを求めます。

ホームズは、数日前にオープンショー自身のもとにも同様の封筒が届いていたことを知り、彼の身にも危険が迫っていると強く感じます。しかし、なぜ彼の家族が狙われたのか、その理由は明らかではありません。オープンショーはその夜、帰宅する途中に不慮の死を遂げてしまいます。この報に接したホームズは、自身の無力さを痛感し、事件の真相解明に取り組むことを決意します。

捜査の過程

ホームズは、オープンショーの家族が受け取った封筒に関する消印や日付から手がかりを得ます。調査の結果、伯父イライアス宛の封筒がインドのポンディシェリから送られていたこと、父のジョゼフ宛の封筒がスコットランドのダンディーから出ていたことを突き止めます。これらの情報から、封筒の到着時期とその後の死亡時期を突き合わせ、封筒を送った犯人の動きが見えてきます。

ホームズは、さらに詳細に調査を進め、各港に寄港した船舶を調べ上げていきます。最終的に、彼は「ローン・スター号」と呼ばれるアメリカの帆船を特定し、船長と共に乗組員がオープンショー家の悲劇と関わりがあると推測します。しかし、ローン・スター号はすでに出航しており、ホームズは犯人を捕らえることができませんでした。

復讐の試みと結末

ホームズは、ジョン・オープンショーと同じくK.K.Kのやり方を模倣した復讐の手紙を作成し、封筒にオレンジの種を入れて誓約の意を示しました。手紙には「J・Oの代理人、S・H」とだけ書かれ、アメリカのサヴァナ港に送信されました。また、ホームズはサヴァナ警察に電報を送り、犯人逮捕を依頼しました。

しかし、運命は残酷で、大西洋を襲った嵐によって連絡は途絶え、ついには「ローン・スター号」の残骸が見つかるものの、その船がどこに向かったのか、犯人は捕まりませんでした。オープンショーの命を救えなかったことが、ホームズの心に大きな影を落とす結果となります。

結び

「オレンジの種五つ」は、ホームズの知的探求が展開されるサスペンスの中に、家族の悲劇や無力感が織り込まれた物語です。全体を通じて、ドイルの緻密な構成とキャラクター描写が光る作品となっており、シャーロック・ホームズの魅力を再確認させてくれます。

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