オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ

ジム・ジャームッシュが監督・脚本を手がけた2013年のアメリカ映画。数世紀もの時を生きる吸血鬼の夫婦を主人公に、現代社会への倦怠感と彼らの独特な生活様式、そして揺るぎない愛を描いた作品です。主演はトム・ヒドルストンとティルダ・スウィントンが務め、ミア・ワシコウスカ、ジョン・ハート、アントン・イェルチンらが共演しています。

物語

舞台は荒廃したアメリカのデトロイトと、エキゾチックなモロッコのタンジェ。デトロイトに暮らすミュージシャンのアダムは、何世紀も生き続けている吸血鬼です。彼は現代の人間たちを「ゾンビ」と呼び嫌悪していますが、数少ない例外として、珍しい楽器などを調達してくれるエージェントのイアンとの交流を持ち、ある種の堕落した日々を送っています。

一方、タンジェに住むアダムの妻、イヴもまた吸血鬼であり、二人は長い年月を共に生きてきました。彼らは汚染された人間の血液を避け、医療機関から密かに横流しされる輸血用血液を頼りに命を繋いでいます。モロッコからデトロイトへイヴがアダムのもとを訪れたことで、二人は久々に静かで満たされた時間を過ごし始めます。

しかし、その平穏は長くは続きません。ロサンゼルスから、トラブルメーカーとして知られるイヴの妹エヴァが突然現れたのです。自由奔放で衝動的なエヴァの存在は、アダムを苛立たせますが、イヴの説得によりしばらく滞在を許します。

エヴァはマイペースに振る舞い、アダムとイヴを振り回します。ある夜、三人で訪れたライブハウスで偶然イアンと出会ったエヴァは彼と意気投合し、そのままアダムたちの家へ連れて帰ります。しかし、夜が明ける前、アダムたちが眠りから覚めると、エヴァに血を吸われたイアンが既に息絶えていました。

エヴァのあまりに衝動的な行動に激怒したアダムとイヴは、直ちに彼女を追い出し、二人はイアンの遺体を川に沈めて処理します。しかし、前夜に三人でいた姿を目撃されていることを恐れ、警察の追及から逃れるため、イヴが暮らしていたタンジェへと逃れることを決意します。

タンジェに到着した二人は、彼らの血液供給源である老吸血鬼で作家のマーローを探しますが、なかなか見つけられません。ようやく探し出した彼は、汚染された血液が原因で既に死の淵に立たされていました。マーローの最期を看取ったアダムとイヴは悲しみに暮れ、当てもなく街をさまよいます。

極度の飢えに襲われ、自分たちの終わりを悟り、寄り添いながら座り込む二人の前に、若いカップルが現れます。空腹に耐えかねたアダムとイヴは、ついにそのカップルに襲いかかるのでした。

キャスト

主要なキャストは以下の通りです。

イヴ: ティルダ・スウィントン
アダム: トム・ヒドルストン
エヴァ: ミア・ワシコウスカ
マーロー（キット）: ジョン・ハート
イアン: アントン・イェルチン
ワトソン医師: ジェフリー・ライト（輸血用血液の売人）

製作背景

本作の企画は2010年から始まりましたが、資金調達に時間を要しました。当初キャスティングされていたマイケル・ファスベンダーに代わり、トム・ヒドルストンがアダム役に起用されています。ドイツやミシガン州からの資金援助を受けて製作が進められました。撮影は2012年6月以降、デトロイト、タンジェ、ハンブルクといった国際的なロケーションで行われました。

評価と公開

2013年4月、第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、パルム・ドールを競いました。カンヌ以外にも、トロント国際映画祭やレイキャヴィーク国際映画祭など、世界各国の映画祭で上映され、その独特の世界観と音楽性、そして主演二人の魅力的な演技が批評家から高く評価されました。

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