オン・ザ・ロード (1982年の映画)

1982年公開ロードムービー『オン・ザ・ロード』：白バイと赤いスポーツカーの逃亡劇

『オン・ザ・ロード』(1982年)は、ジョイパックフィルムとムービー・ブラザーズが製作、松竹が配給した日本映画です。東京から鹿児島まで、白バイと赤いスポーツカーが疾走する様を活写したロードムービーとして知られています。公開当時には『転校生』と併映されました。

伝説のピンク映画監督と若手スターたちの競演

本作は、それまで49本のピンク映画を手掛けてきた和泉聖治監督にとって、一般映画デビュー作という重要な作品となりました。主演の渡辺裕之、藤島くみは本作で映画デビューを果たし、更には、全日本モトクロスチャンピオンの鈴木秀明やロードレース国際A級選手の荘利光といった、実力派ライダーも出演しています。脇を固めるキャストも、秋川リサ、室田日出男、山田辰夫ら、個性豊かな面々が集結しました。秋川リサは本作が映画初出演であり、ヌードシーンにも挑戦しています。

事故から始まる逃亡劇と、それを追う白バイ警官

物語は、白バイ警官の富島哲朗が飲酒運転取り締まり中に事故を起こしてしまうことから始まります。事故相手はファッションモデルの比嘉礼子。富島は謝罪に行こうとしますが、上司の高森はそれを阻止します。数ヶ月後、富島は礼子が事故の影響でモデルを断念したことを知り、改めて謝罪のため礼子のアパートを訪れます。しかし、礼子は故郷の沖縄に戻る決意を固め、姉のさち子と共に赤いスポーツカーで陸路鹿児島へと旅立っていました。富島は、白バイで礼子たちを追いかけることになります。

勤務中に白バイを私用した富島への大規模な追跡劇が展開され、各地で警察による大捜査網が敷かれます。逃亡劇は、単なる追いかけっこだけでなく、様々な人間模様が交錯するドラマへと発展していきます。

製作の裏側：ピンク映画会社と独立プロの共同製作

本作は、洋画ピンク映画の配給会社として知られていたジョイパックフィルムが邦画製作に乗り出した最初の作品です。製作費7000万円は、和泉聖治を代表とする独立プロダクション、ムービー・ブラザーズとジョイパックフィルムが折半して負担しました。

映画には、国祭A級ロードレーサーの荘利光や、全日本モトクロスチャンピオンの鈴木秀明が、それぞれ重要な役どころで出演。その迫力あるカーアクションシーンは、当時の観客を魅了しました。また、比嘉さち子を演じた秋川リサは、数々のオファーを断りながら、和泉監督の熱意に打たれて本作への出演を決めたと言われています。

幻の作品：入手困難な状況とリバイバル上映

残念ながら、『オン・ザ・ロード』はDVD化されておらず、現在では中古VHSテープでしか入手することができません。しかし、その希少性ゆえに、熱心なファンから高い評価を受けており、2011年には「お蔵出し映画祭」で上映され、2016年には横浜シネマノヴェチェントで35ミリフィルムニュープリントによるリバイバル上映が行われました。2022年には渡辺裕之さんの追悼上映も実施されています。

『オン・ザ・ロード』は、独特の世界観と、豪華キャスト、そして迫力のアクションが融合した、忘れがたいロードムービーです。機会があれば、ぜひ一度ご覧になってください。

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