オーギュスト・ジャン・バティスト・シュヴァリエ

オーギュスト・ジャン・バティスト・シュヴァリエ（Auguste Jean Baptiste Chevalier、1873年6月23日 - 1956年6月3日）は、フランスを代表する植物学者の一人です。彼は特にアフリカの植物相、栽培植物の分類学、そして植物地理学の分野で重要な業績を残しました。

生い立ちと初期の研究

シュヴァリエは1873年、フランスのオルヌ県ドンフロンの農家に生まれました。1891年にカーンの高校を卒業後、1893年には植物学者エリー・アントワーヌ・オクターブ・リニエから、カーンにある複数の栽培園における品種目録の作成を依頼されました。この経験が彼の植物学への関心を深めたと考えられます。その後、一時的に軍務に就いた後、リール大学で学び、シャルル・ウジェーヌ・ベルトランの助手として研究に携わりました。1897年からはパリ自然史博物館のフィリップ・エドゥアール・レオン・ヴァン・ティガンの研究室に移り、さらに研究を続けました。

アフリカ、アジア、南米での探検

シュヴァリエの研究活動は、1899年から1900年にかけてのスーダンでの野外調査を皮切りに、アフリカ、アジア、南米へと広がりました。これらの地域での探検を通じて、彼は多くの植物標本を収集し、その分類学的研究を進めました。1901年には博士号を取得し、高等研究実習院（École pratique des hautes études）で教鞭を執るようになりました。1929年には国立博物館の教授に就任し、1937年には科学アカデミーの会員に選出されるなど、学術的な地位を確立しました。

インドシナでの発見と命名

シュヴァリエの数多くの功績の中でも特に注目されるのは、1913年から1919年にかけてのインドシナ調査です。この調査で発見されたソテツ科の種には、彼の名前を冠して「Cycas chevalieri」と命名されました。この学名は、彼の植物学に対する貢献を後世に伝えるものとなっています。

主な著作

シュヴァリエは生涯を通じて多くの著作を発表しました。以下に代表的なものをいくつか紹介します。

Mission Chari-Lac Tchad, 1902–1904. 1907：チャド湖周辺の調査報告書。
Sudania: Énumeration des plantes récoltées en Afrique tropicale. 1911：アフリカ熱帯地域で収集した植物のリスト。
La forêt et les bois du Gobon. 1917：ガボンの森林に関する研究。
Les kolatiers et les noix de kola. 1911 (Émile Constant Perrot と共著)：コーラノキとコーラの実に関する研究。

これらの著作は、シュヴァリエの植物学における幅広い知識と深い洞察を示しています。彼の研究は、後の植物学者たちの研究に大きな影響を与えました。

晩年と評価

シュヴァリエは1956年6月3日にその生涯を閉じましたが、彼の遺した業績は今日でも高く評価されています。アフリカの植物相に関する彼の研究は、植物分類学の発展に大きく貢献しました。また、彼の探検活動は、未知の植物を発見するだけでなく、植物地理学の研究にも重要な知見をもたらしました。シュヴァリエは、フィールドワークと学術研究を両立させた稀有な科学者として、その名を歴史に刻んでいます。

参考文献

H. Jacques-Félix: Auguste Chevalier, 1873–1956. In: Taxon. 5, Nr. 6, August 1956, S. 120–125
Christoph Bonneuil: Auguste Chevalier, savant colonial. In: Les Sciences Coloniales, Figures et Institutions. 2, Paris 1996, S. 15–35

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